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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: 志喜  陽斗
最終章(第7章):宇宙開闢・清掃神話

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98/100

第98話:世界は「キュッ!」と鳴った。――逆・清掃開始。

争いのすすは消え、憎しみの埃は払われた。

 リトが放った『宇宙開闢・大銀河ブラッシング』は、銀河から一切の不純物を拭い去り、原初の透明な輝きを取り戻させた。だが、その完璧すぎる美しさは、残された者たちにとって耐え難い「欠落」の証明でもあった。

 ベヒモス・シャイニングの甲板に落ちているのは、もはや雑巾の形を留めていない灰色の残骸だけ。アルテミスはその布きれを抱き締め、色のない空を見上げていた。

『彼は、自らを「汚れ」として封じました。……虚無の外側、この宇宙の理が届かない断絶の果てへ』

 リトによって「磨き戻された」女神オメガが、静寂の中に現れた。かつての無機質な管理者ではない。慈愛と悲哀を瞳に宿した、真の神の姿だ。浄化された世界を維持するために、彼は帰らぬ道を選んだのだと、その瞳が語っていた。

「そんな、ことが……。リト様は、自分を犠牲にしてまで……!」

 エルナが膝をつく。だが、その絶望を切り裂くように、ルクレツィアの凛とした声が響いた。

「汚れは、消すものではない。……磨くものだと、あの人は教えてくれましたわ。女神様。リト様が『汚れ』を抱えて消えたのなら、私たちがその汚れを磨き戻せばいいだけのこと。掃除屋が不在なら、客である私たちが、あの人を掃除する番です」

 ルクレツィアは立ち上がり、虚無の彼方を見据えた。

「世界中の『ありがとう』を集めますわ。この宇宙が生きていること。汚れながらも抗っていること。そのすべての生命の鼓動を『洗剤』に変えて、虚無を磨き上げる。……アルテミス、エルナ。手伝ってくれますわね?」

 アルテミスは一瞬、絶望の淵で足を止めた。

「……でも、もし戻らなかったら。私たちの想いさえ、虚無に飲み込まれてしまったら」

「その時は、もう一度磨きに行くだけですわ。……何度でも、あの人が『キュッ!』と鳴るまで」

 ルクレツィアの不敵な笑みに、アルテミスは涙を拭った。

「……そうですね。リト様が磨き残した最大の汚れ(わがまま)が、まだここにありますもの! やりましょう。宇宙規模のお返しです!」

「祈ります。いえ、歌います! 私たちの命の音で、リト様の居場所を暴くために!」

 三人の想いが共鳴し、ベヒモスの船体が七色の光を放ち始める。

 それは破壊の光ではない。命の熱が、ただ一点へと集まっていく。全宇宙を巻き込んだ、「逆・清掃」。

「リト様! 待っていてください。今度は私たちが、貴方を磨き上げます!」

 光が臨界点を突破し、宇宙の境界線を強引に「拭き取る」ように広がっていく。その光の渦が、虚無の中に漂う一人の少年の意識に、一筋の鮮烈な色彩を届けた。

「……まったく。お前たち、汚れすぎだろ」

 暗転。


彼はまだ、帰ってきません。

宇宙は救われましたが、彼女たちの「掃除」はこれからが本番です。

汚れを引き受け消えてしまった掃除屋を、愛という研磨剤で磨き戻す。

かつて洗われた客たちが、今度は店主を洗うために立ち上がります。

宇宙規模の恩返し、その結末を見届けてください。

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