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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: 志喜  陽斗
最終章(第7章):宇宙開闢・清掃神話

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第96話:対決、最高防疫官「オメガ」。――「お前の愛は、宇宙のノイズだ」。

 視界のすべてを、無機質な白が埋め尽くしていた。

 そこは母船『ホワイト・ラボ』の最深部。音も、匂いも、影すらも存在しない。生命が生きるために不可欠な「ゆらぎ」を不純物として排除した、究極の滅菌空間。

 リトは、その幾何学的な床に崩れ落ち、虚空を見つめていた。彼の瞳にはもはや、色彩を愛し、汚れに挑んだ「掃除屋」の光はない。オメガが放つ『概念漂白』は、彼から「生きる理由」を奪い、管理可能な「静止」へと書き換えてしまった。

「ああ……そうか。全部白ければ、磨かなくていい。傷つかなくて、いいんだ」

 リトの口から漏れるのは、感情の死滅した平坦な言葉。傍らに落ちた雑巾は、彼にとって今や「視界を汚すだけの布切れ」に過ぎない。オメガの巨躯が、数式の旋律を響かせて告げる。

『肯定を確認。生命とは摩擦、摩擦とは無益な熱。宇宙の熱死を防ぐには、感情という名のノイズをすべて消去し、完璧な無へ帰さねばならない。リト、あなたは今、その崇高な秩序の一部となったのです』

 リトが、その白い虚無に手を伸ばそうとしたその時――。

 背後の隔壁が、凄まじい物理的衝撃と共に粉砕された。

「――ふざけたことを、抜かしおってえええええ!!」

 咆哮と共に飛び込んできたのは、銀の鎧をズタズタに引き裂かれたアルテミスだった。焼かれた肉から煙を上げ、鮮血を滴らせながら、彼女は聖剣をリトとオメガの間に突き立てる。続いて、己の影を質量へと変えたルクレツィアが、魔力の翼を焦がしたエルナが、満身創痍の体でリトを囲んだ。

「リト様、目を覚ましてください! 私を磨き上げた時、この鎧に宿ったのは無などではない! あなたの手の温もりだ!」

「リト様……! 私は今、世界で一番汚れていますわ!」

 ルクレツィアが叫ぶ。彼女の影はオメガの漂白光線に焼かれ、煤のように崩れ落ちていく。だが、その崩れゆく姿、その焼ける痛み、その流れる血こそが、彼女が今、この瞬間にリトを愛しているという絶対的な証拠だった。

 ヒロインたちの叫びが、リトの脳内に「色彩」を強引に引きずり戻す。

 魔王城の埃、下界の泥、アルテミスの鎧に刻まれた無数の傷跡。

 それらは「ノイズ」などではない。彼が生きてきた、唯一無二の物語の色だ。

「……あ。ああ。……汚いな」

 リトが、低く、重い声で呟いた。

 オメガは冷徹に言い放つ。

『左様です。彼女たちの命の足掻きこそ、不潔の極み……』

「違うよ。汚れているのは、君の方だ」

 リトが、ゆっくりと立ち上がった。

 彼の瞳には、かつての温和な輝きではなく、対象を徹底的に磨き上げるという「求道者」の鋭い光が宿っていた。

「君のその、表情一つ変えず、痛みも知らず、ただ他人の色を奪うだけの『無責任な綺麗さ』が――一番、吐き気がするほど汚れてるよ」

 リトが、床に落ちていた雑巾を拾い上げた。その瞬間、布にヒロインたちの血と涙、そしてリトの激情が浸透し、かつてない「虹色の黒」を放ち始める。すべての汚れを引き受け、それを輝きへと変える掃除屋の真髄。

「ごめん。待たせた。――掃除屋、再開だ」

 リトの指先が雑巾を絞るように動く。その一動作だけで、周囲の空間が「キュッ!」と軋んだ。

「君のその冷たい心、『キュッ!』となるまで、磨き潰してあげる。」


 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

ついにリトが帰ってきました。

彼を闇から引き戻したのは、最強のスキルでも伝説の武器でもなく、ボロボロになりながら「自分たちは汚れている」と胸を張ったヒロインたちの愛でした。

「無責任な綺麗さ」を否定し、泥臭い生の実感を肯定する。

これこそが、本作を通じて描きたかったリトの答えです。

感情を取り戻した掃除屋の雑巾がけは、もう誰にも止められません。

次回、物語は宇宙規模の「大掃除」へ。

銀河を覆う絶望という煤を、リトがどう磨き上げるのか。

そして、その先で彼が払う「代償」とは。

完結まで残り4話。

リトの勇姿を、ぜひ最後まで一緒に見届けてください!

「面白かった!」「リト頑張れ!」と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】で応援いただけると、執筆の雑巾がけがさらに捗ります!

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