第90話:清掃屋の意地。――宇宙最強の「中和剤」をぶっ放せ!
「消毒天使」アルファの背負う四本のアームが、高速で回転を始める。彼女の計算では、リトのような「現地の清掃員」に自分たちの消毒が阻まれることは、確率的にゼロであった。そのイレギュラーを排除するため、彼女は自身の核に直結した最終兵器を展開する。
「……対象を『頑固な汚れ』と再定義。……。……。……。……。……文明ごとの強制消去モードへ移行します。……。……。……【宇宙防疫:ファイナル・サニタイズ(最終滅菌)】!!」
アルファを中心に、空間が「真っ白な立方体」に切り取られていく。その範囲内にいるものは、魂も、記憶も、因果さえも、すべてが「無」に書き換えられる。天界の端から、世界がパラパラと文字通り消滅し始めた。
「リト様、逃げてください! あれに触れたら、存在そのものがなかったことにされてしまいますわ!」
アルテミスが叫び、魔王城のオーナーとなったゼノンも「流石にこれは、私の神格でも防げん……!」と戦慄する。
しかし、リトは動かない。どころか、彼はその「消滅の境界線」に、わざと指先を触れさせた。
「……。……。……。……。……。……なるほどね。……。……。……。……。……これ、『消してる』んじゃなくて、……『強引に真っ白なインクで塗りつぶしてる』だけなんだね」
「……何ですって?」
アルファの表情が凍りつく。リトの指先は、白く染まりながらも、その奥にある「元の色」を必死に探り当てようとしていた。
「……。……。……。……。……。……。……。……掃除のプロはね、……。……。……塗りつぶされた壁を見ても、……。……。……その下に何があるか、……分かるんだよ。……。……。……。……。……。……。……。……アルファさん。……。……。……君が隠そうとしている『汚れ(生命)』は、……。……。……。……。……。……。……こんな薄っぺらな白じゃ、……消えやしないんだ!」
リトは、自身の心臓――魔力の根源を、手に持った雑巾にすべて注ぎ込んだ。
そこに、彼がこれまで救ってきたすべての人々の「感謝の輝き」が共鳴する。
魔王城の黄ばみ、運命の毛玉、根源の汚物……それらを「綺麗にした」という確かな事実が、リトの背後に巨大な「黄金の清掃員」の幻影を作り出した。
「【清掃最終奥義:銀河・概念・一掃】!!!」
リトが雑巾を全力で振り抜いた。
その瞬間、アルファが展開していた「真っ白な立方体」が、まるで古いポスターが剥がれるように、ベリベリと音を立てて剥がれ落ちた。
中から現れたのは、消毒される前よりもさらに輝きを増した、世界の真の姿。
「……。……。……。……なっ……!? ……。……。……。……私の最終滅菌が、……ただの『雑巾がけ』で、……剥がされるなんて……!? ……。……。……。……。……計算が、……計算が合わないわ!!」
「……。……。……。……。……。……。……当たり前だよ。……。……。……。……。……。……。……。……。……掃除にはね、……。……。……。……。……。……。……。……。……。……数式じゃ測れない『真心』が必要なんだから」
リトの一撃が、アルファの防護服を粉砕し、彼女の機械的な四肢をバラバラに分解した。
爆風と共に、アルファは空の彼方へと吹き飛ばされていく。
「……。……。……。……。……。……。……。……覚えておきなさい、掃除屋……。……。……。……。……。……宇宙には、……私以上の『消毒官』が、……まだ……いくらでも……」
その捨て台詞と共に、宇宙の亀裂が閉じていった。
天界には、再び静寂が戻る。しかし、それは以前の「怠慢な静寂」でも、「消毒された無の静寂」でもない。
リトが丹精込めて磨き上げた、活気に満ちた「清潔な静寂」だった。
「……。……。……ふぅ。……。……。……。……。……。……終わったね。……。……。……。……。……。……。……みんな、お疲れ様」
リトはエプロンを外し、汗を拭った。
だが、彼の仲間たちは知っていた。
アルファが残した言葉。そして、世界がこれほどまでに「綺麗」になった今、……次なる戦いの場は、もはやこの地上でも天界でもないことを。
「……。……。……。……リト様。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……次は、……。……。……。……。……『宇宙の掃除』に、行きますか?」
アルテミスの問いに、リトは新品の雑巾を肩にかけ、不敵に微笑んだ。
「……。……。……。……。……。……。……もちろん。……。……。……。……。……。……宇宙が僕を呼んでる気がするからね」
物語はついに、最終編――「新世界ランドリー編」へと突入する。
掃除屋リトの伝説は、星々の汚れを拭き取るために、銀河へと羽ばたこうとしていた。
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