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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: 志喜  陽斗
第5章:世界のシミ・根源的洗浄編

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第86話:不潔の叫びと、掃除屋の哲学。――「失敗はゴミじゃない、汚れなんだ」。

世界のゴミ捨て場から現れた「根源の汚物」を、特製酵素の海に閉じ込めてから二日が経過した。

 次元の裂け目に作られた巨大な「洗濯袋」の中では、不気味な泡が立ち上り、ドス黒い汚れが少しずつ分解され、白濁した液体へと変わっていく。

 しかし、中からの抵抗は凄まじかった。汚物は、分解されまいと、自身の内側に溜め込まれた「数万年分の悲鳴」を、精神汚染として外部に放ち続けていたのだ。

「……。……。……。……捨てられた……。……役に立たないから……。……美しくないから……。……神に捨てられた……。……オレたちは……何なんだ……」

 その声は、天界にいるヒロインたちの心に直接響き、彼女たちの精神を揺さぶる。

「……っ。……なんて、悲しい声……。リト様、この子……この汚物の正体は、私たちが……いえ、神様たちが『失敗作』として切り捨てた、かつての生命たちの叫びそのものなのですわ……」

 エルナが胸を押さえ、苦しげに呟く。汚れとは、単なる物理的な付着物ではない。それは「望まれなかった記憶」の堆積なのだと、汚物は訴えかけていた。

「リト様……。これを消し去ることは、彼らの存在そのものを否定することになりませんか? ……私、なんだか、磨くのが怖くなってしまいました……」

 アルテミスまでもが、剣を持つ手を震わせる。正義感の強い彼女にとって、弱者の悲鳴は最大の毒だった。

 しかし、リトは動じない。彼は静かに、酵素の海を見下ろしながら、誰に聞かせるともなく語り始めた。

「……アルテミスさん。君は、汚れた服を洗うとき、その服を『嫌い』だと思って洗う?」

「え……? いえ、そんなことは。……綺麗になって、また着られるようになってほしい、と思いますけど……」

「掃除も同じだよ。……。……ゼノンさんたちが、こいつらを『失敗作』だと思って捨てたのが、そもそもの間違いなんだ。……。……失敗は、ゴミじゃない。……。……ただの、人生における『汚れ』なんだよ」

 リトの言葉に、汚物の脈動がピタリと止まった。

「……。……汚れなら、落とせばいい。……。……磨けば、また輝ける。……。……それを『捨てて隠した』から、こいつはこんなにひねくれちゃったんだ。……。……。……僕はね、こいつを消し去るつもりなんてないよ。……。……こびり付いた『恨み』という名の垢を落として、本来の『無垢な魂』に戻してあげたいだけなんだ」

 リトは、ベヒモスのコントロールパネルを叩き、酵素の濃度を最終段階へと引き上げた。

「……。……。……聞こえるかい、汚物くん。……。……君が誰に捨てられようと、僕が君を『見つけた』。……。……掃除屋が見つけたからには、もう『汚いまま』でいることは許さないよ。……。……さあ、汚れの鎧を脱ぎ捨てて、本当の自分を思い出してよ」

 リトの慈悲深い、しかし断固とした「清掃宣言」が響き渡ると、汚物の発していた精神汚染が、一瞬にして凪いだ。

 酵素が芯まで浸透し、数万年固着していた「憎しみの油脂」が、ついに根元から浮き上がり始めたのだ。

「……。……。……アタタカイ……。……。……洗ワレルノガ……コンナニ……コワイナンテ……。……デモ……。……」

 汚物の体から、黒い泥が剥がれ落ち、その下から「乳白色の、震える小さな光」がいくつも漏れ出し始めた。

 仕上げの「擦り洗い」の時間は、もうすぐそこまで来ていた。


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