第81話:最高神の「汚部屋」に突撃。――「神様、その寝癖と加齢臭、落とせませんよ」。
運命の糸をフカフカに仕上げ、下界に平和をもたらしたリト。しかし、天界の浄化はまだ終わっていなかった。いや、むしろここからが「本丸」である。
リトが指差した先、黄金の装飾が施された、天界で最も巨大な扉。その隙間からは、目に見えるほどの「どんよりとした灰色の霧」が噴き出していた。
「……みんな、ガスマスクを装着して。……。……この先にいるのは、数万年間一度も自分の体を洗わず、部屋の空気も入れ替えず、ただ『全能』という権力に溺れて腐りきった、この世界の最大の不潔……『最高神ゼノン』だ」
「最高神……。リト様、流石にそれは……。神々を統べる御方を掃除するなど、世界そのものが崩壊してしまうのでは……!」
エルナが危惧するが、リトの決意は揺るがない。
「掃除に聖域はないんだよ、エルナさん。……崩壊するなら、不潔なままでいるより、綺麗になってから崩壊した方がマシだ。……いくよ。……【清掃魔導:次元・扉・瞬間除菌】!」
リトが扉に手を触れた瞬間、青白い光が走り、頑固に固着していた「呪いの油分」を分解して扉が左右に開かれた。
中に広がっていたのは、黄金と宝石に彩られた空間……ではなかった。
そこは、山積みになった「空になった神酒の瓶」、書き殴られた「人類滅亡のラフ案」が散乱する床、そして何より、巨大な玉座に座り、脂ぎった髪を振り乱して「……眠い……管理とかマジ無理……」と呟く、巨大な老人の姿だった。
「……最高神、ゼノン……。……これが、私たちの崇めていた……神の真の姿……?」
アルテミスが絶望に目を見開く。最高神ゼノンは、もはや自分の魔力の重みで身動きが取れなくなっていた。その魔力は、長年の不摂生と不潔な思考によって「粘着性のある黒ずみ」に変質し、玉座と一体化してしまっていたのだ。
「……何奴だ……。私の……心地よい『まどろみ(不潔)』を邪魔する者は……。消えろ……。この『神の垢』に触れて、永遠の怠惰に沈むがいい……」
ゼノンが腕を振ると、玉座の周囲から、文字通り「数万年分の垢」が津波となってリトたちに襲いかかった。それは触れた者の活力を奪い、魂をドブネズミのような色に染め上げる、究極の不潔攻撃。
「……うわっ、汚いな。……これ、ただの垢じゃない。……『万物の腐敗』の概念が混ざってる。……でも、ゼノンさん。君がそんなに怠いのは、ただ『身体が重すぎる』からだよ」
リトは、ベヒモスの全魔力を右手に集中させた。手に持ったのは、高純度のダイヤモンドでコーティングされた、世界一硬い『デッキブラシ』。
「アルテミスさん、クラちゃん、足場を固定して! ……ルクレツィアさん、魔王、最高神の『魔力の油分』を中和するアルカリ魔法を! ……これから、この神様を『一皮剥いて』あげる!」
「リト様、命令を待っていましたわ! ……【清掃連携:超・重曹・銀河旋風】!!」
「ふん……。神を洗うなど、前代未聞。……だが、この爽快感の先に、新たな世界が見えるというのなら……。いくぞ、ゼノン! その汚いオーラごと、リトに磨かれるがいい!」
リトが飛び出す。最高神の放つ「怠惰の津波」を、リトは驚異的なステップで(一歩ごとに床を磨きながら)回避し、ゼノンの鼻先に肉薄した。
「……ゼノンさん。君の寝癖、もうクシじゃ通らないから……『高枝切りバサミ』でいくよ。……【清掃奥義:神格・剥離・スクレイピング】!!」
リトのデッキブラシが、最高神の額に突き立てられた。
バリバリバリッ!!
という、氷河が砕けるような轟音が天界に響き渡る。最高神を覆っていた「不潔の鎧」が、リトの一撃によって粉砕され始めた。
「ギャァァァァァァッ!? 剥がれる! 私を……私を優しく包んでいた『闇』が! 冷たい空気が……清潔という名の恐怖が、私の肌を刺すぅぅぅっ!!」
「恐怖じゃないよ、それが『感覚』だ。……さあ、汚れの下に隠れた、本来の君を見せてよ!」
リトの掃除は、ついにこの世界の頂点に君臨する存在をも、一塊の「汚れ」として処理し始めたのである。
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