第76話:天界の「仮面」を剥げ。――金粉(ゴールド・ダスト)で隠した不潔。
魔王城の空を裂いて降臨した、上位天使ウリエル率いる天界の軍勢。彼らは「下界が綺麗すぎて、相対的に自分たちの汚れが目立つ」という、掃除屋からすれば噴飯ものの理由でリトを糾弾した。
「リト様、信じられませんわ……! 神の使いともあろう方々が、掃除をサボる正当化のために、私たちの努力を台無しにしようとするなんて!」
アルテミスが聖剣を天に向け、怒りに震える。しかし、リトは既に冷静だった。いや、むしろ「究極の獲物」を見つけたハンターのような、静かな興奮すら瞳に宿していた。
「いいよ、アルテミスさん。……前から思ってたんだ。空から時々降ってくる『神の奇跡』の光……あれ、どことなく『掃除機の排気の臭い』がしてたからね。……ウリエルさん、君たちの背中にあるその大きな羽根。……それ、光ってるんじゃなくて、光る粉を塗りたくって、下の『黄ばみ』を隠してるだけだよね?」
「な、何を……!? 愚かな人間が、神聖なる『天界の光』を侮辱するか!」
ウリエルが激昂し、黄金の槍を振り下ろす。そこから放たれたのは、万物を平伏させる神聖な光。……しかし、リトの「清掃眼」には、その光の中に混じっている『大量の微細な塵(金粉)』がはっきりと見えていた。
「……やっぱりね。その金粉、吸い込むと喉が痛くなるタイプだ。……ルクレツィアさん、魔王、援護をお願い。……天界の『厚化粧』を、クレンジングしてあげるよ」
「お任せください、リト様! 私の『概念・煮洗い』を、天界の雲ごとブチかまして差し上げます!」
「ふん、元魔王の私を洗ったリトだ。……天使の二、三人、洗えないはずがなかろう。……いくぞ!」
リトはベヒモスの甲板から、新開発の『高浸透・オイルクレンジング・バズーカ』を構えた。これは、強固な皮脂汚れや、厚塗りされた化粧(魔力装飾)を一瞬で浮かび上がらせる、リト特製の強力洗浄剤である。
「【清掃魔導:真実のクレンジング・フォグ】!!」
ドォォォォォォォン!! という重低音と共に、ピンク色の微細な霧が天の軍勢を包み込んだ。
すると、どうだろうか。天使たちが纏っていた眩い黄金の光が、クレンジング剤に反応してドロドロの「黒い泥」へと変わっていく。
「ギャ、ギャァァァァァァッ!? 光が……私の誇り高き『神の光』が、ただの『油ギッシュな黒ずみ』に変わっていくぅぅぅっ!?」
「変わったんじゃないよ、ウリエルさん。……それが君たちの『正体』だ。……掃除をサボって、見た目だけ飾ってたツケが回ってきたんだ。……さあ、みんな! 天界の連中を丸洗いするために、雲の上まで突撃だ!」
リトの号令と共に、魔導戦艦ベヒモスは重力を無視して垂直上昇を開始した。
地上最強の掃除屋による、天界大掃除作戦――『ホワイトニング・ヘヴン』が今、始まったのである。
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