第75話:天界からの「クレーム」。――「綺麗にしすぎだ、下界の掃除屋!」。
魔王城が世界一クリーンな観光スポットになり、人々が温泉を求めて魔王領に集まり始めた頃。
晴れ渡った空が、突然、パリンとガラスが割れるような音を立てて裂けた。
「……何事ですわ!? 私たちの『ピカピカ・リゾート』の営業を妨害する不届き者は!」
ルクレツィアが空を見上げて叫ぶ。
空の裂け目から降りてきたのは、まばゆい光を放つ軍勢。……しかし、リトはその光の裏側に隠された「不自然さ」に、即座に眉をひそめた。
「……みんな、注意して。……あの天使たちの羽、光ってるけど……あれ、『光の粉』を振りかけて汚れをごまかしてるだけだよ。……いわゆる『芳香剤で悪臭を誤魔化してる』状態だね」
「な、何だと……!? 神聖なる天界の使いに向かって、なんという無礼を!」
先頭に立つ上位天使――『審判のウリエル』が、憤慨した様子で叫ぶ。
彼の羽根からは、キラキラとした金粉が舞っている。しかし、リトには見える。その金粉の下にある、数万年分の「神々のサボり」が生んだ、黒ずんだ皮脂汚れが。
「お前が下界を……特にこの魔王領を綺麗にしすぎたせいで、天界と下界の『コントラスト(明暗)』が崩れてしまったのだ! 下界がこんなにピカピカだと、我ら天界の『少しばかりの汚れ』が目立ってしまうではないか!」
「……え。それ、僕のせいなの?」
「そうだ! 掃除を止めろ! さもなくば、神の名において、この地に『神罰という名の不潔(概念的なゴミ)』を再投下する!」
天界の言い分は、あまりにも勝手なものだった。自分たちの掃除が面倒だから、下界を適度に汚しておけというのだ。
「……。……なるほどね。……神様たちが、一番の『汚部屋の住人』だったわけだ」
リトの目が、かつてないほど冷たく、鋭い光を帯びる。
彼はゆっくりと、腰に下げた「次元をも拭き取る雑巾」を握り直した。
「アルテミスさん、魔王様。……。……天界の『大掃除』、……受けようか。……神様たちの、その『見せかけの光』の下にある黒ずみを、全部漂白してあげるよ」
物語はついに、地上を越え、天界の大掃除へと突入する。
リトの「清掃無双」は、ついに神々をも震え上がらせる領域へと達したのだ。
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