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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: 志喜  陽斗
第3章:魔海浄化と人魚の涙編

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60/100

第60話:【魔海編・完結】液体クリスタルの海。リト、魔王城という名の「汚部屋」を指差す。

『廃神の巨兵』――それは、神々に「不要」と断じられた悲しみと怨念の塊。巨兵が振り下ろした「錆びた神槍」の一撃は、空間そのものを腐らせ、海面を真っ黒なヘドロへと変えようとする。

「リト様、危ないっ!」

 アルテミスが前に出るが、リトはその肩を優しく叩いた。

「大丈夫だよ、アルテミスさん。……この子たちは、ただ『洗ってほしかった』だけなんだ。……長い間、暗い場所に押し込まれて、自分が誰か分からなくなってるだけ」

 リトは巨兵の懐に飛び込んだ。普通の人間なら、その負の魔力に触れた瞬間に精神が崩壊する。しかし、リトの全身からは、これまでの掃除で蓄積した「圧倒的な清浄エネルギー」が、陽だまりのような暖かさとなって溢れ出していた。

「……よしよし、まずはそのサビを落としてあげよう。……【清掃奥義:万物・還元のリサイクル・シャイン】!」

 リトが巨兵の胸元に手を当てた瞬間、純白の光が爆発した。

 それは破壊の光ではない。対象物の「本来あるべき形」を検索し、そこへ強制的に時間を巻き戻す、神すら恐れる『超・復元洗浄』である。

 キィィィィィィィィン!!

 巨兵を構成していたゴミたちが、光の中で分解されていく。錆びた槍は黄金の輝きを取り戻し、腐った歯車は滑らかに回転を始め、賞味期限の切れた神酒は、天界の香り漂う「最高級の蒸留酒」へと生まれ変わった。

「……あ。……あぁ……。……暖かい。……私は、ゴミなんかじゃ、なかったんだ……」

 巨兵は、美しい光の粒子となって霧散し、魔海の空へと還元されていった。

 空の割れ目はリトのワックスで見事に塞がれ、あとに残されたのは、かつてないほど濃密な魔力を称えつつも、クリスタルのように透き通った『聖なる海』。

 海底数千メートルまでが見通せ、人魚たちの歌声が水の分子を伝って、世界中に響き渡る。

「……。……終わったのね、本当に」

 ネフィリムが、自分の指先を透かして見える海面を見つめ、静かに呟いた。

「……はい。……リト様。見てください。人魚の国の人々が、皆、海面に顔を出して……あなたに祈りを捧げていますわ」

 エルナの指差す先、数万の人魚たちが、リトに向かって感謝の歌を捧げていた。海は今、世界で最も美しく、最も「正しい」場所となったのだ。

「……ふぅ。……これでようやく、潮風がベタつかなくなったね。……みんな、お疲れ様」

 リトは、少しだけ汚れたエプロンをパパッと払い、満足げに微笑んだ。

 セリナが涙を浮かべて歩み寄る。

「リト様……! この海を、私たちの命を、こんなにも綺麗にしてくださって……。この御恩、一生忘れません。……どうか、このまま人魚の王宮で、私たちの『王』として……」

「あ、ごめん。それは無理かな」

 リトは、間髪入れずに断った。そして、北の空――どす黒い雲が渦巻き、腐敗した魔力が立ち昇る大陸の奥地を指差した。

「……あそこに、世界で一番『掃除をサボってる部屋』があるからね。……魔王城。……あそこのトイレと換気扇、たぶん地獄みたいなことになってるはずなんだ。……それを放っておくわけにはいかないよ」

「……。……やっぱり、そう仰ると思いましたわ」

 アルテミスが、誇らしげに、そして少し呆れたように笑う。

「リト様が行くところ、どこまでも共に行きましょう。……魔王の首ではなく、魔王城の『汚れ』を、共に絶滅させるために!」

 リト一行を乗せたベヒモスが、クリスタル化した海を切り裂き、北へと進路を取る。

 伝説は、第4章『魔王城・大掃除遠征編』へと続く。

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