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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: 志喜  陽斗
第3章:魔海浄化と人魚の涙編

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第47話:人魚の国が「ツルツル」すぎて歩けない!? リト、滑り止めワックスを開発する。

数億年分の「ぬめり」を誇った『魔海のカーテン』が、リトの手によって完全に消滅し、世界中の海流はかつてないほどの清浄さと循環速度を取り戻した。その結果、リト一行が拠点としている人魚の王宮『アクア・パレス』は、神話の時代ですら到達し得なかった「絶対潔癖」の領域へと足を踏み入れていた。

「……あ。リト様、危な――ッ!」

 セリナが警告を発するよりも早く、王宮のメインホールを歩こうとしたエルナの足が、氷の上を滑るかのように宙を舞った。

「きゃぁぁぁっ!?」

 聖女の品位もどこへやら、エルナは派手な音を立てて尻餅をつき、そのまま摩擦係数ゼロに近い床をスーーーッと数百メートル先まで滑っていった。

「……うーん。やっぱり『次元・つけ置き洗い』の余波が強すぎたかな。床の石材が、分子レベルで平滑になりすぎちゃってるね」

 リトは、ピカピカ……というより、もはや存在しているのか疑わしいほど透明な床を見つめ、冷静に分析する。

 現在の王宮は、汚れが全く付着しないどころか、空気中の水分すらも弾き飛ばす「超・撥水状態」だ。人魚たちは尾びれがあるから泳げるものの、二本足で歩くアルテミスやエルナたちにとっては、一歩歩くたびに命の危険を感じるエクストリームな環境と化していた。

「リト様……! 掃除が完璧なのは素晴らしいことですが、このままではリト様に歩み寄ることすら叶いません! 私がリト様の胸に飛び込もうとするたび、床の滑りによって軌道が逸れてしまいます!」

 アルテミスは、壁に背中を預けて必死にバランスを取りながら叫んだ。彼女はリトに抱きつこうとして三回連続で壁に激突し、そのたびに床を滑って廊下を往復していた。

「そうだね。掃除は『綺麗にする』だけじゃなくて、『住みやすくする』のがゴールだから。……よし、急いで『適正摩擦・防滑ワックス』を作るよ」

 リトは、ベヒモスの甲板に特設された錬金ラボ(という名の清掃用具室)に籠もった。

 彼が取り出したのは、先ほど『グリース・ベヒモス』から精製した「聖なる脂の結晶」と、海底火山の噴火口で採取した「吸着性微粒子」。これらを黄金比でブレンドし、リトの魔力で定着させる。

「名付けて、『グリップ・マスター・プロ』。これを塗れば、どんなにピカピカな床でも、全力疾走しても滑らない。むしろ、垂直な壁だって歩けるようになるよ」

 リトは霧吹きを手に取ると、王宮の床にシュッ、シュッ、とワックスを散布していった。

 散布された場所は、見た目の輝きはそのままに、靴の裏に吸い付くような絶妙なグリップ力を取り戻していく。

「……おおっ!? 立てます! 立てますわ、リト様! それどころか、この床、踏みしめるたびに足裏がマッサージされるような心地よさ……っ!」

 エルナが床の上でピョンピョンと跳ねる。リトのワックスには「疲労回復魔法」も付加されていた。

 人魚のセリナも、そのワックスの効果に目を輝かせる。

「リト様、この技術……人魚の国だけでなく、地上でも大流行しますよ! 事故もなくなるし、何よりこの『歩くのが楽しくなる感覚』は、世界中の人を幸せにします!」

「商売にするつもりはないんだけどね。……でも、これでようやく、心置きなく『天井の掃除』に取り掛かれるよ」

「……リト様。天井を掃除するために壁を垂直に歩くリト様のお姿……。……ふふ、下から眺めるのが楽しみです」

 アルテミスが邪な期待を寄せる中、リトの「住環境改善(大掃除)」は、ついに重力すらも制御する領域へと加速していく。

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