第42話:古代の魔導ルンバ、大増殖。海底の「大掃除ロボット軍団」結成!
海底火山の煙突掃除に成功したリト。しかし、一台の『ピカ丸』では、広大な魔海の底をすべて掃除するには数百年かかる。そこでリトが目をつけたのは、海溝の砂に埋まっていた、かつての魔導大戦の遺物――大量の『自律型・機雷』の残骸だった。
「リト様、それは機雷です! 触れれば大爆発を起こし、海そのものを破壊する禁忌の兵器ですよ!」
エルナが真っ青になって叫ぶ。
「爆発するのは、中の『火薬(魔力結晶)』が不安定だからだよ。……これを取り出して、代わりに『固形洗剤』を詰め込めば……ほら、世界最高の『全自動・洗浄ポッド』に早変わりだ」
リトは、アルテミスに「ちょっと機雷を集めてきてくれる?」とお願いした。
「リト様のお頼みとあれば、深淵の底まで拾ってまいりましょう」
アルテミスは、爆発するかもしれない機雷の山を、まるで林檎を拾うかのように軽々と抱え、ベヒモスの作業室へと持ち帰った。
リトの「超高速・分解作業」が始まる。
彼の指先が魔導回路に触れるたび、殺戮のプログラムが書き換えられ、代わりに「汚れを見つけたら死ぬ気で磨く」という、清掃屋の執念が刻み込まれていく。
「【清掃魔導:一括・再定義】!!」
リトが魔力を流し込むと、数百個の機雷が同時にカチリと音を立て、青い光を灯した。
それらはもはや武器ではない。リトの掃除魂を宿した、海底掃除ロボット軍団――『ピカ丸・マークII』である。
「よし、みんな! 海底の『ぬめり』を、一箇所残らず吸い取っておいで!」
ベヒモスのハッチが開き、数百台のピカ丸が、まるで魚の群れのように深海へと放たれた。
ピカ丸たちは、海底に積もったヘドロや、岩にこびり付いた藻、沈没船のサビを、驚異的な連携プレーで「削り、吸い取り、磨く」。
シュバババババババッ!!
ピカ丸たちが通り過ぎた後には、まるで磨き上げられた大理石のような海底が広がっていく。その光景は、もはや深海ではなく「神殿の床」のようだった。
「……あ、あの。リト様。……ピカ丸たちが、私の鱗まで磨こうと追いかけてくるのですが……っ!」
セリナが、数台のピカ丸に囲まれて逃げ回っている。
「あはは、ごめん。……汚れセンサーの感度を上げすぎたかな。……セリナさんの鱗、まだ少し『古い角質』が残ってるって判断されたみたいだ。……痛くないから、大人しく洗われちゃいなよ」
「ひゃ、ひゃんっ!? ……ああ、でも、このブラシの振動……なんだか、クセになりそうです……」
人魚の姫が、海底でピカ丸に揉み洗われながら、とろけるような表情を浮かべる。
そんな平和(?)な光景の中、アルテミスは一人、ピカ丸たちに負けじと自分の鎧を磨いていた。
「……リト様。機械に頼るのも良いですが、やはり最後は『手拭き』こそが至高。……見てください、私のこの盾。リト様の顔が、毛穴の奥まで見えるほどに磨き上げました」
「……う、うん。それはちょっと磨きすぎかも。……光が反射して、眩しくて前が見えないよ」
リトの掃除軍団が海底を制圧し、海域全体の「水質」はついに理論上の限界値――『絶対清浄』へと到達しようとしていた。
しかし、水が綺麗になりすぎたことで、今まで「汚れ」に隠されていた『古の禁忌』が姿を現してしまう。
海底から浮上してきたのは、巨大な、そしてあまりに不気味な「黄金の檻」だった。




