第38話:守護神、ペットになる。リトの家には「巨大な洗濯機」が必要?
全身をピカピカに洗い上げられたクラーケンは、もはや世界を滅ぼそうとする凶暴な魔獣ではなかった。
彼は、自らの巨体を小さく(といってもクジラ程度のサイズだが)縮め、リトの乗る戦艦『ベヒモス』の横を、仔犬のように尻尾……ではなく触手を振って並走していた。
「……リト様。俺、こんなに気持ちいいの、生まれて初めてだ。……もう、深海のドロの中に帰りたくない。……一生、あんたのそばで洗われていたい」
「あはは、気に入ってくれてよかった。……でも、クラーケンさん。君、そんなに大きいと、僕の家の庭には入れないよ?」
「大丈夫だ! 俺、もっと小さくなれるから! ……ほら、これならどうだ?」
クラーケンが、さらに魔力を凝縮させ、最終的には「リトの肩に乗るくらいの小さな赤いタコ」に変身した。
頭には、リトが貸してあげた小さな手ぬぐいを乗せている。
「……かわいい。……これなら、ペットとして飼えるかもね」
「……リト様。……そのタコ、今すぐ私が刺身にして差し上げましょうか?」
アルテミスが、殺気を含んだ笑顔で包丁を抜きかけた。
「リト様の肩という『聖域』に、私以外の生物が鎮座するなど、断じて許されません」
「ダメだよアルテミスさん。……クラーケンさんは、これから僕たちの旅の『洗濯機』になってくれるんだから」
「洗濯機……ですか?」
「うん。クラーケンさんの八本の触手は、それぞれ独立して動かせるだろ? ……一本は『洗い』、一本は『すすぎ』、一本は『脱水』……って分担すれば、一度に大量の洗濯物ができるんだ」
「……! なんという効率的、かつ革新的なアイデア! さすがはリト様です!」
アルテミスが、一瞬で納得してクラーケンへの敵意を収めた。
こうして、伝説の魔獣クラーケンは、リトの専属「全自動・八本腕洗濯機(愛称:クラちゃん)」として、一行に加わることになった。
「あ、リト様! 前方に島が見えます! ……でも、あの島、なんだか不自然に『ギトギト』しています……」
エルナが、遠方の景色を指差した。
そこは、魔海編の最終局面。
あらゆる汚れを吸い寄せ、巨大な「ヘドロの要塞」と化した、伝説の魔王軍中継基地『ヌメリス島』だった。
「よし。……あそこの『油汚れ』、クラーケンさんの洗浄デビュー戦にしよう!」




