第37話:巨大洗濯大作戦! 八本の触手を「一本ずつ」丁寧に。
「リト様、固定完了しました! ……ですが、このヌルヌル、尋常ではありません!」
アルテミスが、光り輝く鎖(リトが浄化した教会の鎖)を使い、クラーケンの巨大な触手を岩場に縛り付けていた。
クラーケンは暴れようとするが、アルテミスの超人的な怪力と、リトが鎖に施した「滑り止めコーティング」によって、その動きを封じられていた。
「よし。……それじゃあ、まずは第一触手の『フジツボ除去』からいくよ!」
リトは戦艦『ベヒモス』の甲板から、巨大な「超音波チッパー」を遠隔操作した。
ガガガガガッ! と、触手にびっしりとこびり付いていた岩のようなフジツボが、粉々に砕けて剥がれ落ちていく。
「あ、あああぁぁぁ……っ! そこだ! そこが、五百年くらい痒かったんだ……っ!」
クラーケンが、恐怖の叫びではなく、悶絶するような快楽の声を上げる。
「次は、吸盤の『ゴミ出し』だね。……【全自動・バキューム洗浄】!」
リトが放った吸引魔法が、クラーケンの巨大な吸盤に詰まっていた古い沈没船の破片や、ヘドロ、腐った魚の骨などを、一気に吸い取っていく。
詰まりが取れた吸盤が、本来の弾力性を取り戻し、ピンク色の瑞々しい質感を露呈させた。
「……すごい。クラーケンが、みるみるうちに『綺麗なタコ』になっていくわ」
ネフィリムが、影の手を使い、クラーケンの背中に溜まった砂を掻き出していく。
「仕上げは、全身の『ヌメリ取り』だよ。……王女様、お湯の温度は?」
「バッチリよ、リト! 四十二度の『美肌の湯(魔力配合)』、一気に流し込むわよ!」
フラウレルム王女が上空で魔法陣を展開し、クラーケンの巨体を目掛けて、滝のような大量の熱湯を浴びせかけた。
リトはその熱湯に、自作の「重曹・レモン・クレンジング」を投入する。
シュワァァァァァァァァァッ!!
海面が巨大な泡の層で覆われた。
クラーケンの漆黒だった体色が、汚れが落ちるにつれて、鮮やかな真紅と白の縞模様へと変化していく。それは、古代の文献にのみ記されていた「海の守護神」の本来の姿だった。
「……おお……。身体が、軽い。……魂まで、洗われていくようだ……」
クラーケンの巨大な目から、浄化された涙が零れる。
「よし、最後は『保湿』をして終わりだね。……これ、人魚の村で分けてもらった特製オイルだよ」
リトが仕上げのオイルを散布すると、クラーケンの肌はシルクのような光沢を放ち、太陽の光を浴びてキラキラと輝いた。
数千年の汚れを落とし切った伝説の魔獣は、今や「世界で最も清潔な巨大タコ」として生まれ変わったのである。




