六十八話 船の中を見てみよう
難破船見つけた。
ラビが何かに気づいた。
ともあれお宝探しと洒落こんだ。
難破船の甲板は前方が平らで、後方は一段高くなっていて扉つきの部屋があった。
多分、ここから内部に入れるんだろ。
他に入り口は無さそうだし。
「これから中に入るけど、何があるか分からないから慎重にね」
「魔物ならラビが見付けるのです」
「わぁは忍びじゃから心配はいらないのじゃ」
「必要なら破壊して進むわ……」
大丈夫そうね。
このパーティなら、何があってもどうとでもなりそうだ。
ラビがドジしないかは心配だけど。
ともあれ先に進む事にする。
そして扉を開け放ち、一歩進んだところで違和感に気づく。
ん?
床も壁も動いているような……。
なんだろう?
かさかさかさかさかさかさかさかさかさ。
「うぎゃああああああ? フナムシだあああ!?」
「ご、ご主人さま!?」
「ち、ちょっと……?」
俺は瞬時にラビとツバーシャを抱えあげると船の真ん中まで後退した。
「主さまは驚きすぎなのじゃ」
シノは自力で逃げられると信じてた。
そんな呆れた顔で見ないでおくれ。
いや、俺は虫大丈夫な方よ?
でも数が数だから無理だったわ。
めっさ鳥肌たった。
「ちょっと驚いただけさ。再開しよう」
「ちょっとじゃ無かったのです」
「いいから下ろして欲しいわ。このわきに抱えられた格好は屈辱的よ……」
「おお、すまんすまん」
ビックリして二人を抱えたままだったわ。
下ろしてあげよう。
出だしからつまずいたけど、冒険を再開しなきゃな。
扉を開けっ放しにしたからフナムシの大半はどこかに行ったみたいだ。
多少は残っているけど、このぐらいなら大丈夫だ。
中は黒ずんでいるから薄暗い。
良い感じに冒険の臭いが、かもしでてるなあ。
「ご主人さま。変な輪っかが生えているのです」
「舵だね。それをぐるぐる回して船を操るんだ」
「はー。こんなので動かすのです? ちょっとよく分からないのです」
そうだなあ。
言われてみれば、何でこれで船が動かせるのか分からんわ。
まあ、それはともかくここは操舵室なのかな。
だとすれば、地図やらコンパスがあれば欲しいところだな。
城なしがどこ移動しているのかさっぱり分からんし。
そう思ったんが……。
うーん。
地図は朽ち果ててるし、コンパスは──。
六分儀だコレ。
名前は知っているが使い方は分からんなあ。
痛んでて動かないし。
「ここには特に目ぼしいものは無さそうかな」
「ご主人さま。変なの見付けたのです!」
「変なの?」
筒があって、握るところがあって……。
これは銃か?
しかし、引き金がないな。
火縄銃?
マスケット銃だっけか。
しかし、火を入れるところもない。
「シノは銃って知っているかい? あっ、てっぽうとかてっぱうて言うかも」
「なんじゃ、銃とは?」
忍者のシノが知らないなら日出国は伝来していないのか。
イギリシャ王国にも無かったよな。
転生者の気まぐれか?
あるいはプロトタイプとか。
分からんが、あると思っておいた方がいいかな。
「そのボロいの持っていくのかしら……?」
「いらないかなあ。進歩して欲しくないしこのままここで腐ればいいさ」
願わくば、これ一丁であって欲しいわ。
銃の相手なんかしたくない。
地上から撃たれたら俺が不利だし。
あっ、これダンジョンの財宝とかかもしれんな。
「次に行ってみようか」
銃らしきものを放ると階段に向かって下に降りた。
「この階は居住スペースか」
「む、主さま。武器庫らしきモノがあるのじゃ」
「どれどれ……」
「みんなボロっちいのです」
うーん。
海と言うのは腐蝕を加速させるなあ。
軒並み錆とる。
こりゃあ、お宝もあんまり期待できないかなあ。)
「あっ、ご主人さま。変な穴があいた椅子があるのです!」
「これラビ。それに触れるでない」
「そりゃ、トイレだな。ばっちいから他いこう」
「臭うわ……」
船にトイレってあったのか。
まあ、あるか。
さっさと他に行こう。
しかし、この階は居住スペースという事もあり代わり映えしない部屋ばかりだな。
あっ、ハンモックがある。
一度コレで寝てみたかったんだよな。
でも汚いからちとそれは叶わなそうだ。
おおよそ、ロクなモノがないと見切りをつけて次の階に進む事にした。
「しかし、なんもおらんなあ。ガイコツとかユウレイとか出てきても良さそうなんだが」
「魔物ならいるのです!」
「む? どこだ? 特に気配は感じないが……」
「この先にいるのです」
ラビのお耳はこう言うところで特に役に立つなあ。
そして、耳を澄ましたときのお耳ぴくぴくする仕草もいい。
さて、ようやくお出ましか。
この階は倉庫みたいだしな。
お宝の部屋に魔物か。
冒険らしくなってきたな。
「準備は良いかい? いきなり襲って来るかもしれないから、油断しちゃダメだよ?」
「大丈夫なのです!」
「ラビの大丈夫は不安じゃのう」
「そうね。何かやらかさないと良いけど……」
「二人とも信用して無いのです!?」
まあ、ラビだしな。
注意して見ておこう。
それじゃあご対面と行きますか。
期待半分、不安半分で俺は目の前の扉に手をかけた──。




