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私が見たもの、それは次の試合。
窓を開けると入って来たのは大歓声、ちょうどお隣の控室から次の騎士が入場してい行くところ。
馬に騎乗するなんて反則じゃぁ~と叫ぼうとして、マウスピースで叫べないけど、絶句した。
騎士、騎士に見えたけどあれ何⁉
一見金属の鎧に身を包み、軍馬に騎乗している甲冑騎士。
颯爽と鋭いランスを右手に巨大な盾を左手に人馬一体となって颯爽と。
じゃなくてほんとに人馬一体、馬の首のところに騎士の上半身。
ケンタウロスなんてケンタウロスなんて存在してていいのか!
初めて見る人外の姿に頭の中はもうぐちゃぐちゃ。
目から入ってくる情報を処理するのがやっとで試合会場のアナウンスらしいものが聞こえてくるけどそっちの方は頭に残らない。
開始の合図を待たずにケンタウルスが巨大な楯を構えてランスを一振りすると鎧の関節部分から炎が噴き出す、ってあれなに⁉
しかしそのすさまじく雄々しい姿は試合開始を告げる太鼓の音を合図に爆炎に隠された。
煙が晴れた後に立っていたのは貧弱なひげの小柄な男の人がただ一人。
そういえば視界の片隅に居たかななんて思うほど地味だった人が今大きく存在感を示している。
勝ち誇って杖の先から炎やら稲妻やら出してるんだもの。
次に私と闘うあの人魔法使いです、ハイ詰みました。
窓閉めよう。
今司会の端っこにちらりと見えたのはぶっちぎれた上半身じゃない、じゃない、じゃない。
どれくらい経ったのか。
トントン
後ろのドアからノックの音。
「出番です」
主席の話だと次に2試合あったはずなのにもう呼び出しがかかった。
マリーン様が出る試合はできたら応援したかった。
また前の扉が開く。
向こうからいかにもな魔法使いが歩いてくる。
反射的に私の足も体を前へと進める。
もぅーやだ!
ぶっちらばっちゃる!!!
ド
ドカーン、ドドドカーン!
開始は3打目の太鼓なのに1度目でいきなり目の前が閃光と爆炎で見えなくなった。
あっ、まだ私生きてる!
今のフライング!
なんて我に返って冷静な思考が戻った時には壁際に追い込んだ魔法使いさんをひたすらグーでぶん殴ってた。
何が起きたのか、何をしたのかさっぱりわからない。




