表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

5話

※イラストおよび校閲にAIを使用しております。

宰相マザランが俺を鋭く睨みつけ、声を荒げて反発した。


「陛下! そ、そのような戯言に耳を貸してはなりませぬ! この者はこれまで自室に引きこもり、公務を放棄してきたのですぞ!」


それに追従するように、王妃イザベラも国王へと詰め寄る。


「マザランの申す通りですわ、陛下。今すぐこの者を廃嫡とし、さっさとイオシアに送るべきです!」


王妃と宰相の勢いに気圧され、国王は何度か口を開きかけては言い淀んでいた。やがて諦めたように大きなため息を吐き、玉座に深く座り直す。


(くそっ。ダメか。イオシアに送られたら死ぬまで幽閉されるのがオチだ。護送中に抜け出す算段をつけるしかないか……)


俺が絶望の底に沈みかけた、その時。突然、低く逞しい声が大広間に響き渡った。


「なんとも立派な志でしょうか! 我が軍は歓迎致しますぞ!」


挿絵(By みてみん)


重厚な軍靴の音が、大理石の床に力強く響いた。列席者の中から軍服に身を包んだ壮年の男が進み出て、俺の隣に並び立つ。


「ジェラール元帥、なんの真似だ! 南軍の出る幕ではないぞ!」


(南軍元帥……たしかアストリアには北軍と南軍、二つの軍集団があったはずだ)


挿絵(By みてみん)


テオドールの記憶を遡る。アストリア王国は、北方を大国エクイタニアと中堅国イオシアに接し、南方からはゴブリン共に圧迫されている。北方の国境線を守るのが北軍、南方のゴブリンを抑えているのが南軍だ。


「国王陛下、テオドール殿下の心意気をどうか受け止めて頂きたく。一人の若人が国家に殉ずる決意を示しておるのです」


宰相の怒声を意に介さず、この精悍な男は平然と言い放つ。


「ジェラール。テオドールは十五にもなって剣も握ったことがない。それが最前線とは、死にに行くようなものではないのか?」


国王は、即座に反論しようとする宰相を手で制して問うた。その表情には、王子の追放という厄介な決断を先延ばしにする口実を得て、密かに安堵している色が滲んでいる。


「恐れながらご指摘の通りかと。テオドール殿下、安全な後方司令官がよければそのような席も用意できますが、いかがいたしましょう」


俺はまず廃嫡と国外追放を避けなくてはならない。だが、その先にある『世界統一』というクリア条件――千尋を救う奇跡を手にするためには、いずれこのアストリアの軍権を完全に掌握しなくてはならない。返事は決まっていた。


「ジェラール元帥。お飾りになるのはごめんです。弟が生まれた今、民の盾となって最前線に立つことに一切の憂いはございません」


「引きこもりにしては天晴な心構えですな。陛下、ここまで申しておるのです。我が南軍で最低限の訓練を積み、すぐに最前線で務めを果たしていただきましょう。よろしいですかな?」


ジェラール元帥に対して再度異議を唱えようとした宰相を、国王は力強い声音で制した。


「うむ。不肖の倅をよろしく頼む、ジェラール。テオドールよ、お主の心変わりが本物かどうか命をもって証明するのだ。それまで、廃嫡の判断は延期とする」


宰相マザランは忌々しげに顔を歪め、無言で一歩引き下がった。


俺は周囲から向けられる鋭い視線を感じながら、ゆっくりと、そして深く頭を下げる。


「深く感謝申し上げます、国王陛下。そしてジェラール元帥。必ずや最前線で戦果を挙げ、己がアストリア王族としての資質を備えていることを、この命をもって証明してみせます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ