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13話

※イラストおよび校閲にAIを使用しております。

俺は戦場に向かって馬を駆りながら目を凝らし、敗走する守備兵の位置とゴブリンの最前列の距離を見定める。孤軍奮闘する殿が時間を稼ぎながら後退しているものの、群れに飲み込まれるのは時間の問題だった。


「ジュリアン! 俺は二十騎を連れて救出に向かう。お前は残りの八十騎でゴブリン共に突撃を行って時間を稼げ! 三十秒、いや、二十秒で構わない!」


「……分かり……ました。ですが殿下、我々にそのような真似が……」


恐怖に顔を引きつらせるジュリアンに向かって、俺は容赦なく怒号を浴びせる。


「腹をくくって貴族の誉れを見せてみろ! 二十秒だけ時間を稼げばいい! そして全員で帰還しろ! いいな!」


戦場が目前に迫り、敗走する守備兵たちが俺たちに気がついた。彼らは必死に剣を振りかざして存在をアピールする。その後ろには、緑の津波がすぐそこまで迫っている。


「救助にきた! 武具を捨てて騎兵の背に乗れ! ジュリアン! 時間稼ぎを!」


俺は戦場に響き渡るように絶叫した。


ジュリアンたち八十騎の護衛隊は、悲壮な雄叫びを上げながら守備兵の脇をすり抜け、ゴブリンの群れへと突撃した。


俺たち二十騎は守備兵の元で急停止する。生き残りはたったの六人。脚を引きずっている者や、肩を借りながら必死に逃げる者もいた。


「何人か下馬して下から担ぎ上げろ! 手荒くやるが勘弁しろよ!」


半数が下馬して、騎乗した護衛の背に守備兵を押し上げる。俺は百メートル先に目を向けた。


まさにこの瞬間、ただ一人殿を務める守備兵の脇から、ジュリアンたちが緑の壁に突っ込んだ。


ゴブリンの群れは突然の衝撃に慌てふためき、陣形を大きく窪ませる。ジュリアンたちはすぐさま馬上から長剣を振り回し、ゴブリン共を必死に威圧していた。


このまま時間が稼げるかと思った直後、大きな影が群れから跳躍し、先頭のジュリアンに取り付いた。


「ちっ! あれがゴブリン・ウォーリアーか!」


ジュリアンは強烈な衝撃を受けて落馬した。主を失った軍馬は驚き、嘶きを上げて駆け出してしまう。


「くそ! 乗せた奴から順次撤退しろ!」


俺はすぐさま馬の腹を蹴り、ジュリアンたちの方向へ馬を進める。


「撤退だ! お前らも撤退しろ!」


そう絶叫するが、ジュリアンはゴブリン・ウォーリアーと地面で揉み合っている。ジュリアンもそれなりの身体強化魔法を扱えるはずだが、屈強なゴブリン・ウォーリアーの膂力はそれを上回り、今にも首筋に凶悪な牙を突き立てそうだった。


他の護衛はゴブリンの群れから彼を守ろうと前に出るが、圧倒的な数の波に押し返されつつある。とてもじゃないが、下馬してジュリアンからゴブリン・ウォーリアーを引き剥がす余裕がある者はいなかった。


(駄目だ。ここで踏みとどまれば、部隊ごと全滅する……すまんな、ジュリアン)


「ジュリアンを見捨てて――」


部隊を生かすための冷徹な損切りを指示しようとした、その時。


殿を務めていたあの守備兵が、低く鋭い踏み込みで猛然とジュリアンに肉薄した。


挿絵(By みてみん)


「なっ!」


新手の接近に気づいたゴブリン・ウォーリアーは、ジュリアンを掴みながら身を捩り、狡猾にもその体を盾のように突き出した。


次の瞬間、その守備兵は流れるような身のこなしから、正確無比な剣筋でジュリアンの脇下へ剣を突き入れた。


「ギャアアアアッ」


神業のようなその刃は、ジュリアンの鎧を掠め、背後のゴブリン・ウォーリアーの肩口に深々と突き刺さっていた。痛みに悶えるゴブリン・ウォーリアーは、咄嗟にジュリアンの体を離す。


(なんて奴だ! 身体強化魔法も剣術も、他の兵士とは比べ物にならないじゃないか! それなら……)


「そこの殿! ジュリアンを担いでそのまま後退しろ! できるな!」


その男は俺が指示するより早く、ぐったりするジュリアンを肩に担ぎ上げ、重装備の人間を抱えているとは思えない、人ならざる速度で駆け出した。


「よし! 丘上めがけて散開しながら撤退しろ! 炎魔法に気をつけろよ!」


俺は迫り来るゴブリンの群れを背に、必死の逃走劇を開始した。

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