美しき魔獣セイレーン②
「……そうゆうおぬしはどうなんじゃ? 偉そうに人に講釈垂れておるが、おぬしこそ人のことを言える立場かえ? おぬしの蜜壺からは死んだ魚の臭いがする」
「死んだ魚なんて飼ってないっちゅうねん! とっても……あれです、フルーティーですよ」
「ではおぬし、歳はいくつぞ」
「……24です」
「殿方との経験は?」
「どうでもいいじゃないですかそんなこと! そうですよ! ないですよ! だって仕方ないじゃないですか勇者のパーティーの魔女の子孫で、王から直接命を受ける優秀な魔女なんですから、まわりも軽率にお手を出しづらいんですよ! 高嶺の花なんです! わかれ!」
「そんなこと言ったら妾は人魚の女王じゃ」
「いいじゃないですか女王、女王権限で若い雄呼び出して酒池肉林してればいいじゃないですか」
「権力でまぐわうなどむなしいであろう! 焼けるような夜を過ごしたいのじゃ!」
「そんなこといってるから人間に手を出すまで落ちぶれるんですよ!」
「言わせておけば、おぼこ娘に説教されるいわれはないわ! 妾は少なくともモテてていた時期がある。おぬしのような夜な夜な官能小説で自分を慰めているような非モテ女とは違うんじゃ!」
「なんですと!? 『放蕩貴族とやけどした夜』シリーズは文学作品としても名作なんですよ!?」
「ほれ見たことか、おぬしのようなさみしい女が妾に盾突こうなどと……やれやれ、これでは妾の歌に対するダメ出しもあてにならんな。書物でしか男心を知らぬ娘と百戦錬磨の妾……比べるまでも……ふう」
「ぐぬぬ、言わせておけば……」
「悔しかろう! ならば歌を作ってみよ。散々妾の歌をバカにしたのじゃ。さぞ殿方を奮起させる歌詞が紡げるのだろうな!」
「私が歌を? そんなの作ったことありませんよ不公平です」
「なあにかまわんよ。所詮は男心を知らぬ戯言姦しい小娘。妾も寛大な態度で逃げることを許そうぞ」
「ぐぬぬ……いいでしょう! 作ってやりましょう! 殿方をメロメロに誘惑するリリカルな歌を!」
『恋のラスト・エリクサー』
トゥナイト トゥナイト
わかったことがあるの 誰も私を抱いてくれない
トゥナイト トゥナイト
夜はいつも過ぎていくばかりで 私を包んではくれない
起きているのは眠れないからじゃない
誰かを待っているから
やさしくなくてもいい 壊れるくらいだっていい
放り出された私の体 誰も受け止めてはくれないの
貴族は私の血を嫌い
戦士は僧侶のあの子に夢中
魔法使いは同族嫌悪
Ah Ah 恋のラスト・エリクサー
Ah Ah 必要なのは薬じゃなくてあなた
Ah Ah 愛のエクストラ・ヒール
Ah Ah 必要なのは魔法じゃなくあなた
「ハッ、障壁展開!」
「……すまぬ」
「謝られた!」
「おぬしそこまで……」
「やめてくださいよ! 人のことを病んでるみたいに見るの!」
「病んでるじゃろ」
「病んでないですよ! ほらさっき私がしたみたいに、歌詞にダメ出ししていったらいいじゃないですか」
「いや……、ひとつひとつ掘り下げるのは妾にもつらいというか痛い」
「痛いってなんですか!?」
「おぬしよ、妾もう少しだけ頑張ってみるのじゃ」
「勇気を与えてる!?」
そのとき、非情なる突風が吹いた。
「あ、目に水滴が……あれ? ぬぐってもぬぐっても取れない」
「それは涙というんじゃ、おぬしは歌いながら泣いていたのじゃ……」
「そんな……、うわーなんだか本当にかなしくなってきました」
「かなしいときは泣いていいのじゃ」
「うわぁーん、うわぁーん、モテたいぃー、モテたいよぉー」
「いまのおぬしならわかるだろう、妾が愚かにも、人間の雄に手を出してしまったそのわけを……」
「わがりまずぅ」
「だが、そんなことはあってはならぬことなのじゃ、愛に代替え品を求めてはいかんのじゃよ。それは魔女がイケメンゴーレムを作って自分を慰めるのと同じことじゃ」
「(それいいな)はいぃ。わかっていただけて何よりですぅ」
「妾たちは最早ずっ友じゃ。共に愛の試練に打ち勝とうぞ」
「はいぃ」
「作るのじゃ! 妾とおぬしで若者にウケる究極のラブソングを」
「……はい!」
『海の潮が満ちるころ ~VER2~.featアマリア』
ドッキリ ドキドキ 私のハート
ドッキリ ドキドキ はちきれそう
海の潮が満ちるころ あふれる気持ちがこぼれちゃう
ビートゥギャザー ビートゥギャザー
(セリフ)なんだかとってもさびしいの……!
ねえきみは簡単に僕の心を奪っていくね
簡単には負けないぞ!
二つに分かれた尾びれがキュートでしょ?
メイルシュトロム メイルシュトロム
(セリフ)かわいいのはきみのためなんだゾ?
親に貰ったこの体 あなたに捧げていいかもね
種族の誇りのこの鱗 ちょっとだけなら触っていいよ
レッツ・ファイト ゲット・ドリーム
(セリフ)チェーンジ! オス♂になっちゃえー☆
日はまた昇り朝は来る
乾いた体で月を待つ
太陽よりも焼き付く月明り
ドッキリ ドキドキ 私の血潮
ドッキリ ドキドキ ほとばしる
海の潮が満ちるころ 闇が光を喰らうのさ
「これは……成りましたね」
「……いや、妾が言うのもなんじゃが、妾がこれ歌ったらやべえと思う」
「何を言っているんですか魔女とセイレーンの叡智の結晶ですよこれは」
「おぬしがそう思うならそれでいいんじゃが……」
「キシャ―!!」
そのとき一匹の雄の人魚が海面から顔を出した。
「キシャ―! キシャ―シャーシャー。シャシャシャシャ。キシャー」
「なんと……それはまこと……か?」
「キシャー! キシャー!」
「うむ、わかった。これからよろしく頼むぞ。また後でな」
「すいません。なんかキシャーって言ってましたけど、何かあったんですか?」
「あ、うん。まああれじゃ、あの者はずっと妾たちの会話を聞いてたらしい。もっとも理解できたのは妾の声だけだったようじゃが。……それで、まあ、その、あれじゃ、話を聞いていて居ても立ってもいられないといった様子でな……、まあ、その、つまりじゃ、今まで女王だから言い出せなかったが、……妾のことを好いておるとな、申しておって……。……妾たちはずっ友じゃよ?」
「……事件解決ですね」
「待て待て急にやさぐれるな。こうなったのもおぬしのおかげもある。妾に何かできることはないか? 妾たちはずっ友じゃよ」
「いえいえお気遣いなく、あとは漁師のチ〇コをアイシクルソードでぶった切って私の仕事も終わりですから。あー無事に終わりそうで良かった良かった」
「なにもちょん切ることはないじゃろう!」
「残念ですけどー、このまま感染症が体中に広がっていったら命にも関わりますからねー。切っちゃうのが一番ですよー」
「そこは魔女の秘薬とか、魔女の出番ではないか」
「じゃあ体液をください」
「体液?」
「感染元を分析して薬を作るので体液をください。何かできることしてくれるんですよね? 私だって別にこんなことしたくないんですけど、仕事ですから。ほら、ビンをお渡ししますので、さっさと体液を入れてきてください。海水は入れないでくださいね、ほらあそこの岩場あたりでちゃちゃっと」
「……え、ちょっと、妾恥ずかしい」
「人間とヤッちゃう方が恥ずかしいです。ほら早く」
「えー」
アマリアは漁村へと戻り、セイレーンの体液を分析し、一夜にして特効薬を作り上げた。
薬を漁師の患部にふりかけ、あとのことを村のシスターに任すと、ほうきに乗って王都への岐路へ着いた。
王に事件の概要を説明し、解決したことを伝えると、アマリアはさらなる名誉と報酬を受け取った。
クエスト『原因不明の病の調査』クリア。
アマリアの名誉が上がった。
アマリアは12000Gを手に入れた。
アマリアはセイレーンの体液を手に入れた。
アマリアは感染症の特効薬の生成に成功した。
アマリアのレベルが上がった。
アマリアはちょっぴり歌が上手くなった。




