石化の魔獣コカトリス②
「このくらいでいいだろう」
「おー首から下は全部石になりましたね」
「貴様、その状態でよく平気だな」
「魔力で内臓までは石化しないように食い止めてますので、どうぞ作業に入ってください」
「そんな力も持ちながら、自分で自分の胸を大きくすることは叶わんのか?」
「人には向き不向きがあるんです。私にできるのはこの森を一夜にして更地にすることくらいです」
「対話の魔女とか言ってなかったか? まあいい。まずはお望み通り乳首の切り離しに入る」
「乳首だけじゃなくて、乳輪もですよ。ちゃんと向きも覚えておいてくださいね」
「……わかっておる。では我が爪で切り離す。みじめな姿になりたくなければ途中で石化を解除するなよ」
「はーい。なるべく薄くですよー 丁重に扱ってくださいねー」
「ゆくぞ、……シュッ」
コカトリスがその爪を一振りすると、アマリアの石化した二つの乳輪は、その体から切り離された。
その断面はなめらかで、まるで鋭いナイフでバターを切ったようであった。
切り離された乳輪を、コカトリスは己が羽の上で受け止めた。
「石化してるとはいえグロいですね。ちゃんと巨乳にしてから戻してくださいよ」
そのとき非情なる突風が吹いた!
薄く切られた乳輪は風に舞い上がり、大イノシシの石像に激突。
乳首はこなごなになった!
「◎△$♪×¥●&%#?!」
アマリアは言葉にならない絶望の悲鳴を上げた。
その甲高い声はコカトリスの脳内に直接響き、吐き気を催す痛みを与えた。
「なーにやってるんですかア! 丁重に扱ってくださいっていいましたよね。あー親からもらった私の乳首が! 私の乳首ィ……!」
「す、すまぬ……。しかし、急な突風が故、仕方のないこと、許せ」
「……猛き渦巻くは火の精よ……踊り舞い上がるは風の精よ……」
「やめろ! 大技を詠唱するな! 今回は我の落ち度だ謝罪する。当初の予定通り、我が乳首を造形してやる。どんな男も夢中になる宝石のような乳首を約束しよう。人間の乳首の造形は先日の村娘で試したばかりだ、安心せい」
「……。……巨乳のわりに小ぶりでかわいい乳首にしてくれます?」
「まかせよ」
「じゃあ、さっさと胸を盛ってください。ギリギリ不自然じゃない程度のちょうどエロい巨乳を」
「……まかせよ。この壺にためてある泥は、我が石化の魔術で作った石を液状化したものだ。これを塗りたくり固めながら、造形する」
「なんでもいいからさっさと始めてください」
「……承知した。ではさっそく泥を塗っていくぞ」
「はい。……キャ。……ヤ。うう……」
「変な声を出すな集中できん。石化して感覚などないだろう」
「うう……でも自分の胸をまさぐられていると思うと……」
「良い造形にしてほしかったら我を集中させろ」
「はーい。あ、ちゃんと左右対称にしてくださいね」
「舐めるな。我は芸術家だ。そのくらい造作もない」
「あ、けっこう大胆に盛っていくんですね」
「大きく作って固め、そこから削っていくからな」
「垂れないように、張りのある感じでお願いしまーす」
「注文が多い……」
……。
「胸の造形はこんなものだろう、意見はあるか?」
「うーん首があまり動かないので、なんともいえないですけど、この胸で足元が見えない感じがグッドですね。ざっくり胸元のあいた衣装と合いそうです」
「そうか」
「あとは乳首ですね! 頼みますよ!」
「もう早く終わらせたいが、我にも芸術家としての誇りがある、任せよ」
「任せましたよ。脱がしてみたらガッカリ乳首だったー、なんて噂流されたら森焼きますからね」
「なぜすぐ森を焼こうとする……」
「そういえば色はどうなるんですか? 嫌ですよ真っ黒の乳首とか」
「泥はお前の血肉と融合する。色は体質からくるものになるだろう。さきほど貴様は自分の乳首に自信があるといっていたが、それならば心配はなかろう。……集中しているからあまり話しかけないでくれるか?」
「だって暇なんですもーん。返事はしなくていいから、勝手にしゃべってていいですか?」
「勝手にしろ」
……。
「だからねえ、僧侶なんですよやっぱり。魔物との争いは昔より少なくなりましたけど、人と人の争いはあるわけじゃないですかー。どの時代も結局モテるのはヒーラーなんですよねえ。前衛職ってほんとバカ。自分で前に突っ込んでおいて、傷ついたら直してもらって聖女様だーって。僧侶の女も僧侶の女で清楚ぶっちゃってさ、男の子が生まれたら戦士に、女の子が生まれたらシスターにしましょうなんて反吐が出ますよね。だいたい魔女っていうのがそもそも――」
「おい出来たぞ」
「あら、どれどれ、うんうん、なるほど、草案としては悪くないですね。そうですね乳輪はあともう一回り小さく、乳首もそれに準じてサイズダウンしましょうか」
「何様なんだ貴様は」
「できないんなら、バラバラになった乳首返してくださいよ」
「……。しばし待て」
……。
「はぁー。放蕩貴族と火遊びしたいなー。僕は三男だからね、魔女の血が混じっても誰も文句は言わないさ。なんつってなんつって。それで長男と次男がなんかやらかしちゃって、気が付いたら名門貴族の第一夫人でした。みたいな。それでそれを快く思わない勢力からの刺客を魔法でバッタバッタと解決しちゃったりして、貴族の嫁は歴戦の魔女でした。みたいな。キャー」
「盛り上がってるところ悪いが、修正したぞ」
「おん? ふむ。ほほーん。ふんふん。鏡あります?」
「そんなものはない」
「ん、まあでも、ふむふむ。あら、いいんじゃないですか。いいですね」
「喜んでもらえて何よりだ」
「じゃあ早速、石化解いてもらっていいですか? 生の感触を確かめたいです」
「貴様、まだ腕の傷を消しておらんぞ。素で忘れておらんか?」
「あ、そうでした」
「まあいい、こちらは傷に泥を塗ってなじませるだけだ、すぐ済む」
「ぱぱーっとやっちゃってください」
「普通は傷の方を優先すると思うのだが……」
「まあ、こちらは名誉の負傷ですし、それにあったらあったで傷のある女ってエロくないですか?」
「コカトリスにはわからない価値観だ。まあいいさっそく腕に泥を垂らすぞ」
「はいお願いします」
「あとは爪で表面をなだらかにするだけだ……まあこんなものだろう」
「おお早業ですね」
「魔女よ。これほどの傷。いかように負った」
「ある竜種との戦いです。爪が障壁を貫通し、腕を引き裂かれてしまいました。高熱の爪で肉がただれ、ヒーラーも同行していたのですが、跡までは消せませんでした」
「対話とやらは通じぬ相手か?」
「魔王の支配から逃れても、凶暴で人に害をなす存在はいます。みんながコカトリスさんのように対話に応じてくれるとありがたいんですけどね。私もファイアストームを撃たなくて済みます」
「さっき撃とうとしてなかったか?」
「撃たれたくなかったらもう村娘を攫ってバインバインにしないでくださいね」
「心得た。我も人間と敵対する気はない」
「そうですか、ところで石化を解いてもらっていいですか? 自分でできないこともないですけど乱暴なことしておっぱいが取れないか心配で」
「そうか、待たせたな。ムッ」
「おお、体中の石が葉っぱみたいに散っていきますね。ありがとうございます。胸もこれは……! 触っても本物としか思えない感触! どーしよ、着てきた服が着れないかもーなんて。あ、腕もきれいですね」
「左様か。ただ肉体がなじむまではあまり高位の魔法は使わぬことだ。ポロリと取れることはないだろうが、消費した魔力の回復に吸収されることがある」
「わかりましたポロリには気を付けます」
「話聞いてたか? が、まあ杞憂だろう」
「では対話の魔法を説きますね。今日はどうもありがとうございました」
「うむ、人と心を通じ合わせるなど、珍しいひと時を過ごさせてもらった。こちらこそ礼を言おう」
「では……イーグァゲンニシェロ……モーエイクワ」
アマリアが呪文を唱えるとコカトリスは
「ケェ」
と小さくうなずくように鳴いた。
アマリアは着ていた服に再び袖を遠した。
薄手の服の胸元に確かな圧迫感を覚え、アマリアはご機嫌でほうきに腰を下ろした。
ほうきに乗って飛び立つ魔女を、その魔獣はいつまでも見ていた。
ふもとの村に降り立ったアマリアは、村の男たちの視線を一手に集めながら、村娘の家を訪ねた。
美しく変貌したその娘から、厚手のローブを回収すると、アマリアはそれを小脇に抱えたまま、再びほうきに腰を下ろし、村に手を振って飛び立った。
対話の魔法「ハイドゥーモ」の魔力消費は大きい。
言語を持たぬものとすら魂を通じて、無理やり線を形成する。その魔力消費量は爆炎を呼び出す魔法の比ではない。
長時間の使用に疲れ果てたアマリアは、報告を明日に回して自宅で眠りに落ちてしまった。
大きな胸が寝返りを打つのに不便だった。
「きゃああああ!」
翌朝アマリアは悲鳴とともに起床した。
あれほどたわわに実っていた胸がしぼみ、腕の傷がうっすらと浮かび上がっていた。
「……対話の魔法のせいだわ」
アマリアは理解した。対話の魔法によるその膨大な魔力消費を回復しようと、アマリアの体は石化の魔法を吸収し、欠けた魔力へと補填していた。
幸いしぼんだだけなので、前よりはちょっとだけ大きくなったし、コカトリスの意匠の乳首は美しかった。
アマリアは失意の元にローブを深く纏って王城へ赴き、事件の解決を報告し、更なる名誉と報酬を受け取った。
クエスト『魔獣コカトリスの調査』クリア。
アマリアの名誉が上がった。
アマリアは25000Gを手に入れた。
アマリアのレベルが上がった。
アマリアの腕の傷が薄くなった。
アマリアは巨乳になった。
アマリアは巨乳を失った。
アマリアの乳首がきれいになった。
アマリアは美乳になった。




