古の遺跡魔道人形①
「ハイドゥーモ・ワーワー……」
[その必要はアリマセン。魔女様。ワタシ魔道人形には人間の言語がインストールされてイマス」
「そのようですね。あなたを見るにどうやら古の魔術師が残したものに相違なさそうですね」
「肯定デス。我が主タスマルードは遺跡の奥で魔石に魂の一部を移し、アナタのような方を待ち続けてイマス」
「タスマルード……! かの人形遣いタスマルードですね! なんとういう導きでしょう。これは手ぶらでは帰れませんね」
「建物の中にお入りクダサイ。主に会うには面接が必要デス」
溝ひとつない平らな壁面に囲まれた建物に入ると、アマリアの前に横長の部屋と正面に一本に通る一本道が現れた。
「ここは待合室デス。通路にお進みクダサイ」
アマリアは短い通路を進んだ。その中腹にさしかかったそのとき、突如前後に鋼鉄のシャッターが降り、アマリアは通路に閉じ込められた。同時に地面から正六面体のブロックがせり上がった。
「お座りクダサイ。面接を始めマス」
「試練……といわけですね。いいでしょう、はじめてください」
「アナタの名前は?」
「アマリアマリア・マリア・アマリアマリア。遠く祖先から受け継いだ名です」
ピンポーン。
「所属は?」
「ルミネール王国。宮廷魔術師」
ピンポーン。
「身長は?」
「……。168センチ」
ブーブーブー。
アマリアの頭上からけたたましい警報が鳴り響いた!
「アマリア様、主は欺瞞を嫌いマス。ドウカ真実を」
「……。16……」
ブッ。
「171センチです」
ピンポーン。
「体重……はレディに聞くのは失礼デショウ。取り下げマス。デハ3サイズは?」
「3サイズをレディに聞くのは失礼ではないでしょうか?」
ブッ。
「……。バスト85」
ブー! ブーブーブー!
「B81! W57! H85センチです!」
ピンポーン。
「要りますか!? この質問!?」
「主は欺瞞を嫌いマス。あなたが正直者でアルト証明してクダサイ」
「はあ……」
「どうやってここにたどり着きマシタカ?」
「上の坑道に住む、ゴブリンキングさんに聞いて来ました」
ピンポーン。
「主に会う意気込みを」
「大戦の英雄人形遣いタスマルード。自らの研究成果を隠匿し、姿を消した彼の謎を解くことはこの混迷の時代に必要です。私はこの導きを天啓と受け取り、彼と対話を試みるつもりです」
ピンポーン。
「デハ今のを次回予告風に」
「なんで!?」
ブッブー。
「……。
こんにちわ!
私はアマリアマリア・マリア・アマリアマリア。
長いからアマリアって呼んでね!
今日はゴブリンキングさんとお話に来たんだけど、大変!
伝説の魔術師『人形遣いタスマルード』の遺跡があるですって!
行って確かめなきゃ!
でもタスマルードに会うにはいじわるな面接を潜り抜けないといけないの
もう最悪!
だけどダメダメ、アマリア。
世界の平和のために試練を突破して、タスマルードと話さなくっちゃ
だって私は対話の魔女なんだもの。
次回『対話の魔女アマリア』
セクハラ? 面接? タスマルードの試練!
とりあえず一発殴らせろ!」
ピンポーン。ピンポーン。
「ハァ……ハァ……これ要ります?」
「次の質問デス」
「冷たい!」
「貴方の年齢は?」
「いや質問の順番!」
ブッ。
「24です」
ピンポーン。
「休みの日とか何してんの?」
「急なタメ口! えっとそうですね読書や裁縫でしょうか」
ブッ。
「ええ? あと仕事持ち帰ったりしちゃうタチなので、書類仕事とか」
ブッ。
「なんなんですか? 他に何もありませんよ」
「質問を変エマス。週何回スル?」
「……このくらいの壁ならぶっこわせますよ」
……。ピンポーン。
「男性経験は?」
「なんなんですかさっきから! ゼロですよゼロ!」
ピンポン。ピンポン。ピンポン。ピンポン。ピンポーン。
「しつこい!」
「主のイタズラ癖が出たヨウデス、主に変わり謝罪いたシマス」
「いやあなたもタメ口使ってましたよね」
「デハ次の質問デス。巨乳って10回言ってください」
「もはや質問でもなんでもない!」
ブッ。
「はいはいわかりましたよ。巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳、巨乳。これでいいですか?」
「今どんな気持ち?」
「アースクエイクで建物ごと地の底に沈めたいです」
ピンポーン。
「好きな異性のタイプは?」
「もう、そんな質問ばっかりなんですね……。いいですよもうなんでも答えますよ。好きなタイプでしたね。普段はオレ様系の生意気な貴族なんですけど、実は繊細な心を持っていて、軽口をたたきながらひっそり傷ついてるみたいな。でもひょんなことから私にだけは素顔を見せてくれるようになって、意外と嫉妬深くて私のために無茶しちゃうみたいなのが好みです」
「プッ、ア、シッケイ」
「人形に失笑された!」
ピンポーン。
「現王についてどう思われマスカ?」
「急に来るまともな質問! そうですね、現王はとてもお優しい方です。身分の隔てなく民と接する立派な方です。平和を愛し戦争に心痛めています。ですが、そのお優しさが利用され、戦乱を拡大させる可能性も秘めています」
ブッ。
「すごいお尻見てくるのやめてほしいです」
ピンポーン。
「第一王子についてはどう思いマスカ?」
「第一王子という表現は皮肉ですね。王は子宝にあまり恵まれず、王子はただ一人です。権力争いの種がないと言えばそうなのですが、世継ぎがおひとりではやはり心配です。しかし王子は王に似てやさしい心根をお持ちです。そして王にはない、瞳の奥の強い力をお持ちです。王子の成長がこの国の未来を左右するのは間違いないでしょう」
ブッ。
「いや~私もですね~、魔術の指南を何度かしたことあるんですけど、ほんと、ほ~んと可愛い。半ズボンからのぞく膝小僧がもうおいしそうでおいしそうで、はぁ~無垢なままぺろりと導いて差し上げたい」
ブーブーブー。
「なんで、私、本音でしゃべりましたよ!?」
「今のは普通に警告デス。あと主より『男性経験もないくせに導くとか笑わせるな』とのコトデス」
「……ッ、思うのは自由でしょ! 私の思いは私だけのものです!」
ピンポーン。
「『ハイドゥーモ』対話の魔法についてどう思いマスカ?」
「この世でもっとも平和で危険な魔法です。戦乱を望むものがこの魔法を使えば、言葉巧みに魔獣を争いに巻き込み、世界は修復不能なほど傷つくでしょう。対話を通じ分かり合うことは素敵なことです。ですが分かり合った先に危険な欲望があったとしたら、邪まな力を増幅させるだけです。私はアマリアマリア・マリア・アマリアマリア。偉大なる祖の名と対話の魔法を継ぐものです。例え王でもこの魔法を、伝授することはありません。私の使命は対話の魔法を使うことではなく、来たるべき厄災のため、この名と魔法をまだ見ぬ我が子に伝えることにあります」
………………。
「アマリア様、オレ様貴族が見つかるといいデスネ」
「私、お前嫌い!」
シャッターが音もなく開いた。
「ココでの質問は以上です、アマリア様。通路を進みクダサイ。主がお待ちデス」
その部屋には巨大な、岩石から切り出した魔石の結晶があった。
それ以外には何もなく、床も壁も天井さえも真っ白だった。




