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冒険者ギルド

昨日は公衆浴場に入ったあと、帰ってもホノカがまだ寝ていたので俺も一息つこうとベッドに寝転んだ所、一緒になって寝てしまった。風呂に入って来た後ではあったので問題は無いのだが、寝落ちした時のような残念感が否めない。


規定の時間の前に眠りに落ちてしまったので、昨日は晩御飯を食べ損ねた。今、非常にお腹が空いているが、迂闊には動けない状況下にいる。



「腹減ったんだけどな.......」



野宿の時は寝袋だったので分からなかったが、ホノカはすこぶる寝相が悪かった。寝ている時に何度蹴られたのか分からないほどだ。そして今、俺は彼女に抱きつかれている。腕は首に、足は胴体に巻きついている状態。


動こうにも動けない。起こしてしまうのは申し訳ない気がするし、昨日疲れていたのでもっと寝かせておいてあげたいという気持ちがある。起こさないように抜け出そうにも、ガッチリと掴まれているのでそれもままならないのだ。


窓から差し込む日差しを感じていると、段々空腹感が薄れてきたような気がする。鳥の鳴き声も聞こえてくるので、穏やかな気分と共にもう一度眠気が訪れた。



「ま、たまにはこんな朝もいいか」






その後、俺はホノカが起きるまで今日の予定について考えることで時間を潰した。起きてすぐに退いてくれたので、今は着替えて朝食を食べている。


朝ご飯は簡単なフレンチトーストに、軽くサラダが添えられた物だ。蜂蜜ーー正確には蜂型の魔物の蜜だが、それが一段と美味しい。野菜もフレッシュで、朝ご飯に相応しいラインナップだった。


それを食べ終わり、昨日俺達を案内してくれた子にお皿を渡す。自分でやると言ったのだが、それが私の仕事だと必死に主張していたので頼ることにした。その子に着いて行き、彼女の親御さんの所に向かう。


決して野次馬根性では無く、ちゃんとした目的があっての事だ。



「おや?昨日の子達じゃないか。どうしたんだい?」


「一つ聞きたい事があるんですが、今大丈夫ですか?」


「ああ、そんなに時間を取らないならね」



それなら心配はいらない。質問もその答えも直ぐに終わるはずだからな。ちなみにあの少女の名前はエイミーと言い、彼女の母親の名前はアルカさんというらしい。アルカさんの夫は街の鍛冶屋で働いているようで、朝早くから仕事に出ているとか。



「冒険者ギルドの場所を教えて頂きたいのですが」



そう質問して、俺は人の良い笑顔を浮かべるのだった。







そんなこんなでやって来ました、冒険者ギルド。


外観は普通の建物だ。普通の、といってもこちらの世界での普通の基準だが。簡単に言えば西洋風の建物だ。扉の上に二本の剣が交差したマークが目印だと教えて貰った。


いざ、意を決して扉を開けると外からでは聞こえなかった喧騒が耳に飛び込んできた。防音魔法を使用して、中の音が外に聞こえないようにしているのだろう。そうしなければ確実に近所迷惑になりそうだ。



「うるさい......」



しかめっ面をしてホノカが呟く。実は、彼女も一緒にギルドにやって来ていた。荒事も多そうだからと宿で待っていて貰おうと思っていたのだが、本人が一緒に行くといって聞かなかったので仕方なく連れてきてしまったのだ。まあ何かあれば俺が守ってあげればいい。それくらいの力なら有るつもりだ。


周囲を見渡すと、大声でパーティーを募集している人物、酒を飲みながら受けて来た依頼について話している奴、受付に並んで素材を買い取って貰っている奴と、様々な人間がいる。全員が大声で話しているので、自分の声を通すために声を大きくしなければいけないのだろう。ここのギルドがかなり広いというのも理由の一つかもしれない。


冒険者登録は受付のカウンターで出来るとも教えて貰ったので、「新規登録」と書かれた受付に人を掻き分けながら向かう。カウンターにいるのは、美人な受付嬢。端正の取れた顔立ちに、どことない異世界感を感じる。

元の世界じゃああはならないだろうな。別に優劣がそこにある訳では無いけれど。


身長が低いので、カウンターに腕をつくのがやっとだ。早く元の身長に戻りたい。この悩みは年月が解決してくれると思うが、どうにか身長を伸ばす方法が無いものか。なんて事を真剣に考えている場合ではなく、登録をしに来たんだった。カウンターの高さに打ちのめされている暇は無い。



「今日はどうしたのかな?」



さっきの冒険者に向けるような営業スマイルではない、子供向けの笑顔でそう問いかける受付嬢。これがプロか.....。



「冒険者登録をしたいのですが......」



そう切り出した途端、横から無粋な声が割って入った。



「おいおいおいおい、ちょっと待てよぉ!」



チラリと横に視線を向けると、そこに立っていたのはまさに悪役といった風貌の男。赤髪に、目に見えるほど鍛えられた筋肉が半袖の服から覗いている。サイズ合ってなくないか?という無粋なツッコミは無しにしても、彼は俺に不満があるようだ。



「お前みたいな子供が冒険者になるだと?ふざけてんのか!!ここはお前みたいなのが来る場所じゃねえ!さっさと帰って公園でも行ってろ!」



ドン!とギルドの柱を叩きながら彼はそう言う。パワーは中々、強さは速度によるけど魔力量だけで見るならDランクといったところか。


ふざけているのかと問われれば当然



「ふざけてなんていませんよ。俺は真面目です」



答えはこうだろう。



「.......覚悟はあんのかぁ!?」


「あります。無ければここまで来ていません」



即答。問答するまでもない質問だ。相手をする必要は別に無いが、ここらで実力を示しておいた方が後々楽そうだしな。



「そうか......ならいい。試験、頑張れよ!」



朗らかに笑い、俺の背中を叩く男。え?ここは一触即発の流れじゃ......なんで応援されてるんだ?

頭を抱えていると、受付嬢の声が耳に入る。



「もう!ガンレスさんは顔が怖いんですから!あんまり誤解されるような事しないで下さいって言ったじゃないですか!」


「う、す、すまねえ。あんな小さな子供が冒険者になるなんて心配で.......」


「でも、だからと言ってあんまり干渉するのも駄目だって言われていたでしょう?」



俺を心配して.....?


ふざけてんのか→お遊びじゃない

さっさと帰って公園にでも行け→子供なんだから遊んでろ

覚悟はあるのか→本当に冒険者になる気なのか


.........ただの良い人かよ!!疑ってしまった自分が恥ずかしい!これがステレオタイプか....。謝りたい、けどあっちにも非はあるんじゃないか?あんな顔で言われたら誰だって誤解するだろ!



「ごめんね、僕。あの人、悪い人じゃないんだけどちょっとお顔が怖くて.....誤解されやすいだけなの」


「分かってます。俺を心配してくれただけなんですよね?なら怒るのはおかしいでしょう」



さっきまで誤解し続けていたのは棚に上げて、俺は歩み寄る姿勢をとる。



「うん、ありがとう。じゃあ、登録に必要な事をこの紙に記入してくれるかな?書けないなら私が書くけれど.......」


「いえ、大丈夫です。自分で書けるので」



登録票を渡されたので、カウンターの壁を机にして空欄を埋めていく。名前、書けるならスキル、実績、資格などなど、一通り書き終えたので、もう一度受付嬢にこれを渡す。



「うん、ちゃんと書けてるわね。私はカレンって言います。えーと、レインくん!じゃあ試験を行うから私に着いてきて!そこの子も良ければ一緒にね」


「ん...」



ホノカも一緒に来るようだ。情けない戦いは見せられないな。そう思いつつカレンさんに着いていく。


ちなみにガンレスさんはカレンさんに怖い顔と言われたのが余程効いたのか、まだ膝をついて項垂れていた。


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