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殺人

「ああ、俺がこのボンクラ共のリーダーだよ」



突然現れた男がそう言った。


身なりからしてそこに転がっている奴らとは違う。違うのはそれだけではなく、強さもだ。俺の感知に少し前まで引っかからなかった隠密能力には称賛を送りたい。



「................」



すぐに戦闘が始まるかと思いきや、俺をジッと見つめて男はおもむろに口を開いた。



「あー俺はザックっつーんだが......なあ、お前ーー盗賊団(ウチ)に入らねえか?」


「..........はぁ?」



真剣な表情をして何を言い出すのかと思えば仲間にならないかだと?



「いや、いやいやいやいや、そうはならないだろ。俺はお前らを攻撃したんだぞ?分かってるか?」


「それは分かってるよ.......でもお前、俺達のやってる事が許せなくてコイツらを攻撃したんじゃないだろ?違うか?」



周りを一通り見渡してザックは俺を勧誘する。まあ奴隷や商人が死んでいるのを見れば俺が彼らを助けに来たわけではない事に気づくか。仲間がやられたっていうのに冷静だな。



「いや、それでも普通仲間を殺した奴を勧誘するか?おかしいだろ。疑わざるを得ないね」


「別に何にもおかしくなんかねーよ。使えねえコイツらよりお前の方が圧倒的に価値が高い。それに将来性もあるしな」


「ボス!?な、なんでそんな事を......」



使えないと言われてプライドが傷ついたのか、地面に倒れている一人が食ってかかる。



「うるせえ。ガキ一人止められねえ奴が喚くなよ」



が、バッサリと切り捨てられてしまった。


確かに言っていることになんらおかしな点は無い。コイツ本気で俺の事を誘ってるのか?イカれてるな。



「ありがたいお誘いだけど断らせて貰うよ。他にやりたい事があるんでね」



まあ勿論断るけど。俺はこの世界でも犯罪に手を染める気は無い。万引きや盗み、殺人なんて持っての外だ。

え?もう人を殺してるじゃないかって?アイツらは犯罪者だから問題無い。検問にも引っかからないさ。



「そうか......残念だよ。折角久しぶりに見込みのある奴を見つけたと思ったんだけど.....なっ!」



話している最中だというのにザックは地面を蹴り、俺に向かって担いでいた剣を振るった。完全なる奇襲だ。


嫌な予感がしたので、受けるのをやめて横っ飛びにそれを回避する。いつ戦いが始まってもいいように準備はしていたがまったくタイミングが読めなかった。


驚いたことにザックの振るった剣は、俺の後ろにあった木を真っ二つに切り裂いた。



「お〜よく避けたな。大体これで一発なんだが.....ますます気に入ったよ、お前」



一撃で木を真っ二つに、しかも魔力の流れは感じられなかった。



「........スキルか」


「その通り。【斬鉄剣】っていうんだが中々使い勝手の良いスキルでな。重宝してるぜ」



呟いただけだったのだが律儀にも答えてくれるとは思わなかった。スキルの詳細は話していないから大丈夫だと考えているのかもしれないが、だとしたら俺を舐めすぎだ。


俺のスキル【死霊契約(ネクロマンス)】は契約した死霊の能力を手に入れることができる。能力とは腕力や脚力などの身体能力に留まらない。


つまりーー



「【鑑定】」



契約対象のスキルすらも使用することができる!


俺がこれに気づいたのは修行を始めてから半年が経った頃だった。いつも通り身体作りと魔力量を増やす鍛錬をしていた所、頭の中でスキルを獲得したという声が聞こえた。

最初は半信半疑だったが、契約するたびにスキル獲得の知らせは鳴り響き事実それが使えるようになっていたのだ。目の前で使えるようになっては信じる外ない。


この【鑑定】はイージスが持っていたスキルのようで、対象のスキル、名前、その他を見透かす事が出来るという便利なものだ。大した情報じゃないと侮るなかれ。この世界において、スキルの秘匿性というアドバンテージを失うのは大きな痛手だ。


イージスの力が強すぎて、契約した時点では俺の身体が彼の力に耐えられなかった。なので、修行を始めてから半年という微妙なタイミングでスキルが定着したのだろう。

それを皮切りに今まで契約してきた魔物のスキルも片っ端から使えるようになり、戦略の幅が広がった。


通常この世界では一人につき一つのスキルしか所持できない。人前で使うつもりはなかったが、始末すると決めた相手の前なら使っても構わないだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スキル【斬鉄剣】

鉄をも切り裂く剣。発動条件は無し。練度によっては鉄のみに留まらず、いつかは銀晶(ミスリル)すらも切断する豪剣となる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



簡潔な説明だ。要約すると、当たらなければ問題無い剣、という事になる。


受け止めるっていう賭けに出て『ヴェンタス』と『フランマ』が破壊されたら元も子もないから、元々そのつもりはなかった。それに避けるのは得意だ。


ザックは【斬鉄剣】を纏った剣での縦切り。さっきのように半身で避けるのはリスクが大きいのでザック自身の身体を軸として背後に回る。


そのまま斬りつけて終わりーーなら良かったが、残念ながらコイツはそんなに甘い敵じゃない。横に振るった短剣は虚しく空を切り、お返しと言わんばかりに強烈な攻撃が飛んでくる。


バク宙をしてなんとか避けたが、今のはかなり危なかった。頬も薄皮一枚切れている。



「あんた......もしかして元兵士?」


「んあ?あ〜よく分かったな。俺はアドマスト公国の元兵士だよ。なんで分かった?」


「今の剣筋がそっちで流行してる剣術の物だった」


「今の一合でそこまで分かるか?でも最初のはアドマスト流じゃねえぜ?」


「盗賊としての剣だろ。御前でも無い以上どれだけ汚くても勝てばいいんだからな」


「そ、よ〜く分かってんじゃねえか」



ザックの剣筋についてなんてどうでもいい。それより俺が気になるのは他にある。



「なんで盗賊なんてやってる?兵士ならこんな事やらずに済んだろうに」


「理由だあ?兵士なんて良いことねえからだよ。薄給だし碌に休みもないんだぜ?まあでも何よりーー金になるからだよ。盗賊って奴は」


「.........そうか。なら良い」


「あっそ、なら再会すんぞ!」



恐らくコイツが盗賊になったのはそこまで昔の事じゃない。アドマストの王が変わったタイミングで解雇、ないしはそうしないといけない状況に追い込まれたんじゃないか?まあ、だとしてもやる事は変わらないか。


縦、横、袈裟斬り、また縦、速いし鋭い良い剣だが、落ち着いて見切れば対処できないものじゃない。


大きく振りかぶって下された剣をバックステップで躱し、今度は俺の方からザックに肉薄する。



「っ!馬鹿野郎が!」



一瞬戸惑いを見せるも、次の瞬間には剣を振る姿勢に入っている。流石と言わざるを得ないな。ザックが俺の間合いに入るより俺がザックの間合いに入る方が早い。


勝利を確信しザックの顔に笑いが浮かぶ。


が、それは直ぐに崩れ去った。


俺の影からタイラントグリズリーの死霊が飛び出す。一瞬ザックの刃はグリズリーの毛皮に阻まれるも、いとも容易くそれを切り裂いた。


しかし、その一瞬が勝負を分ける。


もう、俺の間合いだ。


跳躍し、ザックの首を刎ねる。頭の無くなった胴体からは鮮血が吹き出し、力無く倒れた。


人を殺すのは初めてのような気がしない。俺が日本で殺人を犯したとかではなく、記憶の中で何度も死にゆく人を殺される魔族を見たからだ。


思っていたよりも忌避感は無いし、気分も悪くなっていない。


顔にかかった血を袖でぬぐい、他に敵はいないかと魔法による感知を発動させる。



「っ!?」



同時にバッと馬車の方を振り返る。


感知に反応したのは馬車の中にある微弱な生命反応。ここまで近づかなければ気づかないほどに小さな命。


車輪が壊れ横転した馬車の中に入り、反応のあった樽の蓋を開ける。



「女.....の子?」



中に入っていたのは、酷く衰弱した一人の女の子だった。

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