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間違いヤンデレ  作者: 石山 雄規
序章 十月のショート・ショートケーキ
13/21

今日は明日の

「今日も一日、楽しかったですね先輩」



 だらだらと。



「……先輩?」



 だらだらと、なんにも変わらず、進まない。



「そうだね。結構、楽しいね」



 目新しいことはなにひとつ起きず、カビの生えた青春を過ごす。



「ふっふっふ、明日は結構どころじゃないですよ」



 明日が今日になって、今日が昨日になる。



「なんかあったっけ?」



 そんな昨日を、振り返る毎日。



「なにもない日なんてないのですよ。日々、私たちを取り巻く環境は変わり続けているのです」



 そんな日常。



「要は、なんにもないわけだ」



 いつか。



「そんなことは、今日の私には分かりません。明日の私に期待しましょう」



 いつか、空が落ちるとしても、それは今日じゃない。



「期待薄だなぁ」



 間違ってないだろ?



「むぅ~……そこまで言うのなら、先輩がなにかしてくれればいいじゃないですか」



 そんなに間違ってないと思うんだ。



「なにかって」



 だって、そうだろう。



「なんでもいいですよ。なにかです、なにか」



 こんな、だらだらとした日々に。



「なんだそりゃ」



 僕は、満足しているんだから。



「私は先輩になら、なーにをされてもウェルカムなので」



 ……間違ってないだろ?



「まぁ、考えとくよ」



 僕はふと、振り返って線路を見る。



「その言いぶり……明日の先輩にも期待は持てそうにありませんね」



 辿った線路を眺めて、ぼんやり考えた。


 今日はもう、昨日の後日談だろうって。


 そんなことを、進んでいく電車の中で思った。



「……ねぇ綾乃」



「はい、どうしました」



「昔話しよっか」



「……私、次の駅で降りるのですが」



 プシューと情けない音を鳴らして電車は止まる。扉が開く。



「……んじゃ、また明日」



「はい。また明日」



 綾乃がぺこりと去って、扉が閉まる。電車が動いて、また進む。


 僕はもういちど窓の外を振り返って、綾乃のいるホームを見る。




 後ろを見ることにした。

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