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宙域のブツェンベルヒト  作者: 丸介
第一章

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7/10

1-7★偏向計画(下)

 * 4日19時間27分 *


 RVK-01(ペルヒタ)が、四本の青白い光の尾を靡かせて飛んだ。

 向かうのはエリス防衛基地。対空砲火をしてはいるが、砲台は次々と正立方体に押し潰されていた。

 跳躍と落下を繰り返す正立方体は、まるで人類を嘲笑っているかのようだ。


 「やめろぉっ!」


 アウレリアは引き金を引いた。

 両翼の収束光子(レーザー)砲は、正立方体の動きを捉えきれない。三角錐の直線的な動きと違い、正立方体は自由気ままに動いている。


 ──速い。だが、最高速までの時間は遅い。跳躍頂点は十分狙いる速度だ。


 「地球防衛軍統合戦略AI(カーツェナルプ)! 本機火器管制補助機能、切断!」


 【カーツェナルプ:超高速時の火器管制補助機能の切断は、宇宙防衛法第七条──】


 「いいから切断!」


 【カーツェナルプ:火器管制補助機能、切断します】


 【レオン:おいおい、お姫様(プリンツェッシン)? 何を──】

 【クラウス:ますます当たらなくなるぞ!】


 アウレリアは、操縦桿を小刻みに動かした。

 機首光子弾頭を数発撃つ。その軌跡を脳裏に焼き付け、さらに、照準を少し外して光子砲を放った。


 正立方体をかすめた。光が弾けた。


 【クラウス:当たったぁ?】

 【レオン:なんでだよ!】


 ──ずれる。そして、やはり硬い。単機射撃では無理だ。


 「カーツェナルプ! 概算でいい! 《リーゼ》の重力算出急げ! 射線が安定しない! 同時に、僚機の射線を私に合わせるようにシステム修正!」


 【カーツェナルプ:了解しました】


 収束光子は当たるも、正立方体の破壊には至らない。

 アウレリアは、真紅の機体を変形させた。

 レオンとクラウスも、続いてRVK-01を変形させる。


 人型に近い機体形態。

 エンジンノズルが分散するため、推力は落ちる。その代わり、射角は自由になった。


 「各自、自由に狙え!」

 【レオン:お姫様ぁ?】

 【クラウス:お、ぉう?】


 アウレリアの指示に、レオンとクラウスは意図を理解できぬまま従った。

 だが、二人の収束光子砲は当たらない。


 ──当たらなくていい。今は少しでもデータを!


 【カーツェナルプ:偏向計画、第二段階に移行。相対速度、最終合わせ開始】


 戦略図が更新された。

 エリス防衛基地のミサイル発射口が表示された。

 基地が震えた。

 ミサイル発射口が開き始めた。


 正立方体が、ミサイル発射口を脅威と判定したのかわからない。破壊のために、一際高く跳ねた。


 「狙え!」

 【了解!】


 アウレリアの光線は外れたが、レオンとクラウスの光線は正立方体を捉えた。


 【レオン:当たった!】

 【クラウス:だが硬い!】


 正立方体の表面で、光線が弾かれていた。


 エリスの表面で、正立方体が跳ね回っていた。

 ミサイル発射口が、次々と潰されていく。迎撃システムは、ほぼ無力だった。


 【レオン:不味い。落とされる速度が速い!】

 【クラウス:基地が持たないぞ!】


 【カーツェナルプ:射線軸誤差修正。僚機の偏差修正。同期確認。パターン解析完了。予測値向上】


 「よし! 本機火器管制補助機能、起動! レオン! クラウス! 私に合わせろ!」

 【了解!】


 三機の収束光子砲が光った。

 六本の光線は、正立方体の同一点へ集中した。


 赤熱した正立方体に、ヒビが入った。


 爆発はなかった。


 ただ静かに、正立方体は砂のように宇宙空間に散った。


 「まずひとつ! 続けて落とすぞ!」

 【了解!】


 【カーツェナルプ:三角錐の発射を確認──】


 そこからは、よく覚えていない。


 流星のように走る三角錐の軌道は、スローモーションに見えた。

 落下予測地点は、分かっていた。

 反射的に見たエリス防衛基地。

 司令室の展望デッキ。

 そこに、沢山の人影が見えた。

 皆、それぞれの国の敬礼を捧げていた。


 レーヴェンハルト大佐は笑顔だった。


 『よくできた。合格だ!』


 そう、言われた。

 聞こえるはずのない声が、聞こえた。確かに聞こえた。


 白い閃光。

 巻き起こるプラズマの嵐。

 蒸発した。


 エリス防衛基地は、その役割を終えた。


 【カーツェナルプ:偏向計画、最終段階。核ミサイル、全弾点火】


 「う、ぁああああ!!」


 アウレリアは、叫んだ。


 旧時代の核ミサイル。約一万二千発。

 基地のミサイル発射口は、そんなにはない。


 戦略図が更新された。

 《7/Iリーゼ》からは死角となる、準惑星エリスの地球側の宙域。

 約二ヶ月かけ慎重に敷設されていた核ミサイルに、火が入った。


 核ミサイルを示す光点が、全て《リーゼ》に向かう。


 エリス防衛基地すらも囮につかう、レーヴェンハルト大佐の作戦だった。


 * * *


登場人物

アウレリア(AH-DE503)・訓練兵

レオン(AH-DE511)・訓練兵

クラウス(AH-DE519)・訓練兵


レーヴェンハルト・大佐


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