第93話 「広げる一歩」
外。
朝の空気。
昨日と同じ。
だが。
意味は違う。
今日は。
“広げる日”だ。
「……ここからだな」
悠真が言う。
拠点の外。
境界の手前。
侵食体の痕跡が残る場所。
そこが。
最初の目標。
「まずはここを削る」
白峰 蓮が言う。
「完全にじゃない」
「少しでいい」
少しずつ。
それが今回の方針。
「……地味だな」
蓮斗が言う。
だが。
笑っている。
「でも、嫌いじゃねぇ」
確実に進む。
それが分かるから。
「ぴー!」
ぴーちゃんが浮かぶ。
「ここなら回復いける!」
位置を確認する。
ギリギリ。
だが。
届く。
「……よし」
悠真が言う。
「やるぞ」
踏み出す。
一歩。
境界に近づく。
その瞬間。
地面が動く。
「来たな」
白峰 蓮が言う。
侵食体。
ゆっくりと広がる。
だが。
昨日と違う。
「……止まる位置、見えるか」
悠真が言う。
白峰 蓮が頷く。
「読める」
広がる速度。
範囲。
パターン。
全部。
見えている。
「そこまで行くな」
悠真が言う。
全員が止まる。
ギリギリ。
侵食体が。
その手前で止まる。
「……マジか」
蓮斗が言う。
「完全にラインあるな」
確信に変わる。
境界は。
存在する。
その時。
屍影が現れる。
数体。
だが。
突っ込んでこない。
様子を見る。
「……いい」
悠真が言う。
「ここで削る」
屍影に向かう。
踏み込まない。
ギリギリで止まる。
そのまま。
攻撃。
届く範囲で。
確実に。
一体。
倒す。
屍影が崩れる。
だが。
それ以上来ない。
ただ。
距離を保つ。
「……攻めてこないな」
蓮斗が言う。
「境界越えないと来ない」
白峰 蓮が言う。
「確定だな」
ルール。
確定。
その時。
悠真が言う。
「……ここに印つける」
地面を見る。
境界の手前。
そこに。
石を置く。
目印。
「ここまでが安全圏」
少しだけ。
広がる。
ほんの一歩。
だが。
確実に。
「……これを繰り返す」
白峰 蓮が言う。
「少しずつ」
「確実に」
積み上げる。
それが。
今回の戦い。
その時。
「ぴー!」
ぴーちゃんが言う。
「回復いける!」
範囲確認。
問題なし。
成立している。
この作戦。
その時。
奥。
影が動く。
重殻。
だが。
出てこない。
境界の向こう。
こちらを見ている。
「……来ないな」
蓮斗が言う。
悠真は頷く。
「越えない限りは来ない」
つまり。
このライン。
絶対。
その理解。
大きい。
その時。
ぴーちゃんが小さく言う。
「……これ、押してる」
全員が見る。
「ちょっとだけ……押し返してる」
その一言。
全員が理解する。
ほんの少し。
だが。
確実に。
進んでいる。
広がっている。
安全圏が。
自分たちの場所が。
その時。
悠真が小さく言う。
「……いいな」
短く。
だが。
確かな実感。
これは。
勝ち方だ。
派手じゃない。
速くもない。
だが。
崩れない。
その一歩。
確実に。
踏み出した。
広げる一歩は、小さい。
だが。
それは、確実に未来を変える。




