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第91話 「境界の外側」

外に出る。


 二度目。


 同じ場所。


 同じ空気。


 だが。


 違う。


 意識が。


 変わっている。


「……線、意識しろ」


 悠真が言う。


 短く。


 全員が頷く。


 進む。


 一歩ずつ。


 慎重に。


 昨日見た場所へ。


 侵食体の跡。


 黒く歪んだ地面。


 そこが。


 “境界”。


「……ここだな」


 白峰 蓮が言う。


 足元を見る。


 見えない。


 だが。


 感じる。


 越えてはいけない場所。


「ぴー……」


 ぴーちゃんが小さく鳴く。


「ここ、やだ……」


 感覚が拒否している。


 その時。


 影が動く。


 屍影。


 数体。


 だが。


 突っ込んでこない。


 距離を保つ。


 監視している。


「……完全に見られてるな」


 蓮斗が言う。


 落ち着かない。


「……来ないってことは」


 白峰 蓮が言う。


「ここまでは“許容範囲”」


 つまり。


 この位置。


 安全圏ギリギリ。


「……試してくるぞ」


 悠真が言う。


 その瞬間。


 疾影。


 一体。


 突っ込んでくる。


「っ!」


 速い。


 だが。


 一直線。


「ぴー!左!」


 ぴーちゃんが叫ぶ。


 避ける。


 カウンター。


 斬る。


 倒れる。


 だが。


 それ以上来ない。


 また止まる。


「……単発?」


 蓮斗が言う。


 違和感。


「……試しだな」


 白峰 蓮が言う。


「反応を見ている」


 その時。


 地面。


 侵食体が広がる。


 ゆっくりと。


 円を描くように。


「ぴー!」


 ぴーちゃんが叫ぶ。


「来る!」


 全員が動く。


 だが。


 踏み込まない。


 境界を越えない。


 ギリギリで止まる。


 その瞬間。


 侵食体が止まる。


 それ以上広がらない。


「……なるほどな」


 悠真が言う。


「越えたら囲む」


「越えなければ止まる」


 ルール。


 確定。


「……完全に線だな」


 蓮斗が言う。


 理解する。


 その時。


 奥。


 影が動く。


 今までより。


 大きい。


 遅い。


 重い。


「……あれ」


 蓮斗が言う。


 重殻。


 だが。


 違う。


 サイズ。


 圧。


 明らかに上。


「ぴー……」


 ぴーちゃんの声が震える。


「……変……あれ変……」


 完全に同じじゃない。


 強化個体。


 もしくは。


 別の何か。


 だが。


 動かない。


 境界の向こうで。


 こちらを見ている。


「……越えろって顔してるな」


 蓮斗が言う。


 挑発。


 明らかに。


 だが。


 悠真は動かない。


 越えない。


 絶対に。


「……まだだ」


 小さく言う。


 その判断。


 正しい。


 だが。


 同時に。


 悔しさもある。


 届かない。


 あと一歩。


 その距離。


 その時。


 ぴーちゃんが小さく呟く。


「……あれ、見てるだけじゃない」


 全員が見る。


「……覚えてる」


 その一言。


 空気が凍る。


 学習。


 観察。


 記録。


 ただの敵じゃない。


 “積み重ねる敵”。


 悠真は静かに息を吐く。


 そして。


「……戻る」


 言う。


 今はここまで。


 これ以上は。


 踏み込まない。


 そのまま。


 拠点へ戻る。


 静かに。


 だが。


 確実に。


 そして。


 全員が理解する。


 敵は。


 ただ強いだけじゃない。


 考えている。


 そして。


 学んでいる。


 境界の外側は、敵の世界だった。


 そして。


 そこに踏み込むには、まだ足りない。



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