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第89話 「踏み込みすぎた先」

 静かだった。


 足音だけが響く。


 外。


 拠点の外。


 まだ。


 “範囲内”。


 だが。


 空気は明らかに違う。


「……ここ、さっきより濃いな」


 蓮斗が言う。


 周囲を見る。


 黒い影が、少しずつ増えている。


 屍影。


 数は多くない。


 だが。


 配置が違う。


「……散ってない」


 白峰 蓮が言う。


「位置を取っている」


 ただの敵じゃない。


 “待っている”。


 その時。


「ぴー……」


 ぴーちゃんが小さく鳴く。


「……いやな感じ、強い……」


 悠真は前を見る。


 侵食体の跡。


 地面が歪んでいる。


 その奥。


 さらに黒い領域。


「……あそこ」


 小さく言う。


 蓮斗が頷く。


「行くんだろ」


 当然のように。


 だが。


 白峰 蓮が止める。


「待て」


 短く。


「範囲」


 地面を見る。


 線。


 さっき決めた。


 限界。


「……あと少しで出る」


 事実だった。


 ここから先は。


 回復圏外。


 リスクが跳ね上がる。


「……どうする」


 蓮斗が聞く。


 少しだけ。


 迷いがある。


 その時。


 影が動く。


 屍影。


 数体。


 だが。


 突っ込んでこない。


 距離を取る。


 そして。


 ゆっくりと後退する。


「……またか」


 蓮斗が言う。


 誘導。


 間違いない。


「ぴー!」


 ぴーちゃんが叫ぶ。


「ついてったらダメ!」


「絶対ダメなやつ!」


 その声。


 強い。


 悠真は立ち止まる。


 前を見る。


 奥。


 気配。


 何かがいる。


 確実に。


「……見てるな」


 小さく言う。


 白峰 蓮が頷く。


「同意する」


「完全に観察状態」


 その時。


 地面が動く。


「っ!?」


 侵食体。


 足元から広がる。


 じわじわと。


 囲むように。


「ぴー!下!」


 ぴーちゃんが叫ぶ。


 飛び退く。


 間一髪。


 だが。


 その動き。


 読まれている。


「……誘導されてるな」


 白峰 蓮が言う。


「侵食体で位置固定」


「その上で包囲」


 その通りだった。


 屍影が広がる。


 疾影が動く。


 周囲を囲むように。


「……まずいな」


 蓮斗が言う。


「これ、出るタイミングなくなるぞ」


 その時。


 悠真が言う。


「戻る」


 即断。


「今は踏み込みすぎだ」


 蓮斗が少し驚く。


「いいのか?」


「いい」


 短く。


 だが。


 確実に。


「ここでやる意味はない」


 白峰 蓮も頷く。


「正解」


「情報は取れた」


 その時。


 ぴーちゃんが少し安心したように鳴く。


「ぴー……よかった……」


 そのまま。


 後退する。


 一歩ずつ。


 慎重に。


 そして。


 境界。


 越えない。


 絶対に。


 その瞬間。


 空気が変わる。


 圧が消える。


 屍影も。


 追ってこない。


 ただ。


 見ている。


「……完全に境界あるな」


 白峰 蓮が言う。


 理解する。


「侵食体がライン作ってる」


 つまり。


 戦場が作られている。


 自由じゃない。


 完全に。


 “管理された空間”。


 悠真は振り返る。


 奥。


 黒い領域。


 そして。


 そのさらに奥。


 見えない何か。


「……いるな」


 確信。


 これは。


 ただのモンスターじゃない。


 もっと上。


 “指揮する存在”。


 その一歩手前まで来た。


 だが。


 まだ。


 届かない。


 そのまま。


 拠点へ戻る。


 静かに。


 確実に。


 そして。


 全員が理解する。


 これは。


 “踏み込めば死ぬ領域”。


 その存在を。


 初めて知った日だった。


 一歩、近づいた。


 だが。


 まだ届かない。



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