第87話 「動くか、守るか」
沈黙が続く。
拠点の中央。
全員がいる。
だが。
誰もすぐには動かない。
情報は出揃っている。
ダンジョンの変化。
屍影の増加。
統制。
他拠点の崩壊。
そして。
“何かがいる”可能性。
「……動くか?」
蓮斗が言う。
少しだけ前のめりに。
「このまま守っててもジリ貧だろ」
正論だった。
だが。
それだけじゃない。
「……軽いな」
白峰 蓮が言う。
冷静に。
「動く=リスク増加」
「守る=消耗増加」
「どちらも正解ではない」
完全な答えはない。
その時。
「……じゃあどうすんだよ」
蓮斗が聞く。
白峰 蓮は少し考えて。
「情報不足」
「それが最大の問題」
短く言う。
「判断できない」
事実だった。
敵の正体。
範囲。
規模。
全部曖昧。
その状態で動くのは。
危険すぎる。
「……なら」
悠真が口を開く。
全員が見る。
「分ける」
短く言う。
「動く側と、守る側」
蓮斗が少し笑う。
「やっとそれか」
納得している。
白峰 蓮も頷く。
「合理的」
その時。
「……待って」
小さな声。
黒崎 美月。
全員が見る。
「……それって」
「分かれるってことだよね」
確認する。
悠真が頷く。
「そうなる」
その瞬間。
少しだけ。
空気が揺れる。
不安。
当然だった。
その時。
「……無理だな」
黒崎 恒一が言う。
静かに。
だが。
はっきりと。
「分断は崩壊の始まりだ」
その言葉。
重い。
「……でもよ」
蓮斗が言う。
「このままじゃ詰むだろ」
ぶつかる。
意見が。
その時。
蒼月が言う。
「……分けたら、負ける」
全員が見る。
「こっち、それで崩れた」
短く。
だが。
実体験。
重い。
分断。
それは。
弱体化。
その結果。
崩壊。
その時。
「……なら」
悠真が言う。
少しだけ考えて。
「分けない」
結論。
だが。
「でも動く」
矛盾のようで。
違う。
白峰 蓮が理解する。
「……範囲限定か」
悠真が頷く。
「拠点を基点に動く」
「完全に離れない」
つまり。
守りながら動く。
リスクはある。
だが。
最小限。
「……それならいける」
蓮斗が言う。
納得している。
「ぴー!」
ぴーちゃんが言う。
「それなら回復届く!」
重要な要素。
全員が理解する。
これなら。
成立する。
その時。
「……よし」
黒崎 恒一が言う。
「それで行け」
短く。
承認。
その瞬間。
決まる。
方針が。
完全に。
だが。
まだ。
問題は残っている。
どこへ行くのか。
何を調べるのか。
敵は何なのか。
何も分かっていない。
その中で。
動く。
それが。
今の選択。
悠真は外を見る。
ダンジョン。
黒い穴。
あそこが中心。
間違いない。
「……まずは近い所からだな」
小さく言う。
そして。
全員が理解する。
これは。
守る戦いから。
“動く戦い”への転換。
その一歩だ。
守るだけでは、終われない。
だから。
進まなければならない。




