第85話 「外の気配」
朝だった。
拠点は動いている。
戦いの後でも。
止まらない。
「外周、問題なし」
「補修完了してます」
声が飛ぶ。
落ち着いている。
昨日の戦いが嘘みたいに。
でも。
違う。
全員分かっている。
“終わっていない”。
その空気。
残っている。
悠真は外を見る。
ダンジョン。
静かだ。
だが。
不気味さは増している。
「……妙だな」
小さく言う。
「何がだ?」
蓮斗が聞く。
「……静かすぎる」
白峰 蓮が頷く。
「同意する」
「前よりも“意図的”だ」
自然じゃない。
その時。
「ぴー……」
ぴーちゃんが小さく鳴く。
「なんか……いやな感じする……」
直感。
だが。
軽視できない。
その時。
「……誰かいる」
玲奈が言う。
全員が反応する。
「どこだ」
悠真が聞く。
「……あっち」
指す。
森の奥。
気配。
人。
「……人か?」
蓮斗が言う。
「敵じゃねぇよな?」
分からない。
だが。
近づいている。
「……止まれ」
悠真が言う。
警戒する。
そのまま。
姿が見える。
一人。
少女。
白い息。
息が荒い。
疲れている。
だが。
目は。
鋭い。
ただの一般人じゃない。
「……ここ、拠点?」
短く聞く。
警戒している。
距離を取っている。
悠真が答える。
「そうだ」
「……あんたは」
少女は少しだけ迷って。
「……蒼月」
それだけ言う。
「北海道側」
その一言で。
空気が変わる。
外の存在。
他勢力。
初めて。
“直接”来た。
「……なんでここに」
白峰 蓮が聞く。
蒼月は短く答える。
「逃げてきた」
「……ダンジョンが、おかしい」
その言葉。
重い。
悠真が一歩前に出る。
「詳しく話せるか」
蒼月は頷く。
だが。
「……その前に」
少しだけ視線を下げる。
「……水、ある?」
限界だった。
その瞬間。
美月が動く。
「あるよ」
すぐに持ってくる。
迷いがない。
差し出す。
蒼月は少し驚いて。
受け取る。
飲む。
一気に。
その様子を。
黒崎 恒一が見ている。
そして。
「……中に入れ」
短く言う。
悠真が少しだけ見る。
判断。
迷いはない。
「……ああ」
蒼月を拠点へ入れる。
それは。
一つの決断だった。
人を受け入れる。
守る対象を増やす。
その意味。
重い。
でも。
決めたことだ。
誰も見捨てない。
その結果。
世界が。
少しずつ。
繋がり始める。
外は、もう始まっている。
そして。
拠点も、外と繋がっていく。




