第83話 「一点突破」
押されている。
屍影。
疾影。
重殻。
そして。
統制核。
流れは完全に向こうだ。
「……このままだと削り切られる」
白峰 蓮が言う。
冷静に。
「防衛は成立してる」
「でも“勝ててない”」
その通りだった。
崩れてはいない。
だが。
減らせていない。
終わらない。
「……ぴー」
ぴーちゃんが小さく鳴く。
少しだけ焦っている。
「このままだと、いっぱい来る……」
悠真は前を見る。
統制核。
あれが原因。
分かっている。
だが。
届かない。
「……一点だ」
小さく言う。
「一点突破する」
蓮斗が笑う。
「やっと攻めるか」
「ただし」
悠真が続ける。
「全員で行かない」
その言葉。
蓮斗が止まる。
「……は?」
「分断される」
「それが狙いだ」
白峰 蓮が頷く。
「正しい」
「統制核は守られている」
「全員で動けば崩される」
つまり。
「少数で抜く」
悠真が言う。
「俺と蓮」
「前を抜く」
「蓮斗、外側維持」
蓮斗が歯を食いしばる。
「……分かったよ」
任せる。
それしかない。
「玲奈」
「援護」
無言で頷く。
「ぴー!」
ぴーちゃんが浮かぶ。
「回復、まかせて!」
その一言。
全員が少しだけ軽くなる。
次の瞬間。
「行くぞ!」
悠真が踏み込む。
屍影を斬る。
突破。
すぐに。
疾影が来る。
「ぴー!右!」
ぴーちゃんが叫ぶ。
反応。
避ける。
カウンター。
落とす。
そのまま。
前へ。
重殻。
壁のように立つ。
「……抜けるぞ」
白峰 蓮が言う。
横に回る。
弱点を探す。
「ぴー!下、少し柔らかい!」
ぴーちゃん。
即座に判断。
悠真が踏み込む。
下を狙う。
通る。
崩れる。
重殻が倒れる。
「よし!」
道が開く。
その奥。
統制核。
ゆっくりと動く。
周囲の屍影が集まる。
「……守られてる」
白峰 蓮が言う。
だが。
止まらない。
「ここで止める」
悠真が言う。
踏み込む。
その瞬間。
空気が変わる。
「……っ!」
圧。
統制核から。
波のように広がる。
屍影が一斉に動く。
速い。
強い。
「……まだあるのか!」
その時。
「ぴー!!」
ぴーちゃんが叫ぶ。
「危ない!!」
光が広がる。
柔らかい光。
包む。
体が軽くなる。
傷が、消える。
「……助かった」
悠真が言う。
そのまま。
止まらず。
前へ。
統制核。
あと少し。
「終わらせる!」
踏み込む。
刃を振る。
その瞬間。
統制核が。
歪む。
「……っ!?」
消える。
いや。
逃げた。
「……なに?」
白峰 蓮が言う。
統制核が。
後退している。
まるで。
“判断している”ように。
その瞬間。
全体の動きが変わる。
屍影が引く。
疾影も。
重殻も。
ゆっくりと。
後退する。
「……撤退?」
蓮斗が言う。
悠真は見ている。
ダンジョンの奥。
統制核。
消えていく。
「……違うな」
小さく言う。
「試されてる」
その言葉。
重かった。
戦いは終わった。
だが。
勝っていない。
ただ。
見られただけだ。
一点突破は、通じた。
だが。
それで終わる相手じゃない。
戦いは。
次の段階に入る。




