第79話 「見えない変化」
夜だった。
拠点は静かだ。
人の気配はある。
でも。
昼とは違う。
少しだけ。
落ち着いている。
その中で。
白峰は一人、座っていた。
紙。
簡単な地図。
そこに線を引いている。
「……密度が上がっている」
小さく呟く。
昼に見た情報。
整理している。
ダンジョン周辺。
明らかに。
以前より。
集まっている。
ただの偶然じゃない。
その時。
「……どうだ」
悠真が来る。
白峰は顔を上げる。
「変化している」
短く答える。
「具体的には」
「三つ」
指を立てる。
「一つ、数が増えている」
「二つ、動きが変わっている」
「三つ」
少しだけ間を置く。
「……集まっている」
その言葉。
重い。
「……なんでだ」
悠真が聞く。
「分からない」
「だが」
「意図はある」
断言する。
自然じゃない。
だから。
何かがある。
「……中心は」
「ダンジョン」
迷いなく言う。
あそこが原因。
それは確定している。
その時。
蓮斗が来る。
「さっき見回りしてきた」
少しだけ表情が硬い。
「外、静かすぎる」
「……静か?」
「ああ」
「前はもっと散ってた」
「今は」
「まとまってる感じだ」
白峰が頷く。
「一致している」
情報が揃う。
そして。
結論が近づく。
「……集められてる?」
悠真が言う。
白峰が少しだけ考えて。
「可能性はある」
「何かが」
「集めている」
その言葉。
空気が変わる。
ただの強化じゃない。
“意思”がある可能性。
その時。
「……それは厄介だな」
低い声。
黒崎 恒一。
いつの間にか後ろにいる。
「……じいちゃん」
「聞こえていた」
静かに言う。
そして。
「数が増え、まとまる」
「次に来るのは何だ」
問い。
答えは簡単だった。
「……押し寄せる」
悠真が言う。
黒崎 恒一は頷く。
「そうだ」
シンプルな流れ。
でも。
確実な脅威。
その時。
外から声。
「見張りから報告!」
全員が反応する。
「ダンジョン付近、動き増加!」
タイミングが合いすぎている。
偶然じゃない。
「……来るな」
悠真が言う。
黒崎 恒一が見る。
そして。
「慌てるな」
短く言う。
「準備はできている」
拠点を見る。
整っている。
防衛。
人。
流れ。
全部。
積み重ねてきたもの。
「……耐えられる」
黒崎 恒一が言う。
確信を持って。
悠真は頷く。
「……ああ」
守る。
それは決まっている。
でも。
今回は違う。
ただの防衛じゃない。
“来ると分かっている戦い”。
その意味は大きい。
その夜。
拠点は動き続ける。
静かに。
確実に。
次に備えて。
そして。
ダンジョンの奥で。
何かが動く。
まだ。
誰も知らない。
でも。
確実に。
近づいている。
見えない変化は、最も危険だ。
そして。
それは、もう始まっている。




