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第69話 「守ったあと」

 静かだった。


 さっきまでの音が、嘘みたいに。


 何も聞こえない。


 ただ。


 荒い呼吸だけが残る。


「……はぁ……」


 その場に座り込む。


 力が抜ける。


 もう。


 一歩も動けない。


「……終わったな」


 蓮斗が言う。


 いつもの声じゃない。


 力が抜けている。


 でも。


 少しだけ。


 笑っている。


「……ああ」


 それしか言えない。


 白峰も、その場に座る。


「……想定以上の消耗だ」


 でも。


 その顔は。


 少しだけ、安堵している。


 玲奈は、そのまま座り込む。


「……つかれた」


 短い一言。


 でも。


 それが全てだった。


 ぴーちゃんが、ふわっと光る。


「……おわった」


 その光も。


 弱い。


 でも。


 温かい。


 後ろから。


 足音。


 振り返る。


 人たち。


 守っていた人たち。


 ゆっくりと近づいてくる。


「……大丈夫、ですか」


 声をかけられる。


 頷く。


 でも。


 うまく言葉が出ない。


 その時。


「……ありがとう」


 一人が言う。


 小さく。


 でも。


 はっきりと。


「……本当に」


 次に。


「……助かりました」


 また一人。


 そして。


 広がる。


 声が。


「……ありがとう」


「……ありがとうございます」


「……ほんとに……」


 止まらない。


 その言葉。


 全部。


 届く。


 胸に。


 強く。


「……ああ」


 やっと声が出る。


 短く。


 それだけ。


 でも。


 十分だった。


 その時。


 子供が近づいてくる。


 小さな足で。


 ゆっくりと。


「……ありがとう」


 そう言って。


 ぎゅっと。


 服を掴む。


 その感触。


 軽い。


 でも。


 すごく重い。


 守った。


 ちゃんと。


 守れた。


 その実感が。


 一気に押し寄せる。


「……よかった」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 力が抜ける。


 視界が少し滲む。


 気づく。


 涙。


 無意識だった。


 止めようとも思わない。


 ただ。


 流れる。


 静かに。


 周りを見る。


 他の人も。


 泣いている。


 安心して。


 やっと。


 緊張が解けて。


 その光景。


 それだけで。


 分かる。


 ここは。


 守れた。


 この場所は。


 壊れなかった。


 だから。


 また。


 立てる。


 次に進める。


 それが。


 何よりも大きかった。


 守ったあとに残るのは、静かな安心だった。


 そして。


 それが、人を生かす。


 その時間が。


 ゆっくりと流れていた。



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