第68話 「押し寄せる限界」
終わらない。
まだ。
影が来る。
数は減った。
でも。
“止まらない”。
「……はぁ……っ」
呼吸が乱れる。
足が重い。
腕も。
限界に近い。
「……まだ来るのかよ!」
蓮斗が叫ぶ。
答えはない。
でも。
目の前にある。
現実として。
「……集中切れるな」
白峰が言う。
その通りだった。
判断が遅れる。
一瞬。
それだけで。
「――!」
影が入り込む。
隙。
ラインが、少しだけ崩れる。
「……まずい!」
誰かが叫ぶ。
影が抜ける。
後ろへ。
守る側へ。
「……っ!」
反応する。
間に合うか。
ギリギリ。
踏み込む。
叩く。
止める。
崩れる前に。
「……危なかった」
蓮斗が息を吐く。
でも。
余裕はない。
全員が分かっている。
これは。
もう。
“限界の先”。
「……持たないぞ」
白峰が言う。
「あと少しで崩れる」
玲奈が、低く言う。
「……つかれる」
ぴーちゃんの光も弱い。
「……でも」
後ろを見る。
人たち。
まだいる。
守られている。
でも。
ここが崩れたら。
終わる。
「……あと少しだ」
言い聞かせるように言う。
根拠はない。
でも。
必要だった。
気持ちが。
折れないために。
「……いける」
蓮斗が言う。
「ここまで来たんだ」
「……やるしかねぇ」
白峰が頷く。
「論理的には非合理」
「だが」
「ここは通す」
玲奈が前に出る。
「……まもる」
ぴーちゃんが、もう一度光る。
「……まもる!!」
全員が踏ん張る。
一歩も下がらない。
限界でも。
削られても。
止まらない。
その時。
気づく。
影。
減っている。
明らかに。
「……減ってる」
誰かが言う。
その一言。
全員に伝わる。
いける。
あと少し。
「……押すぞ!」
声を上げる。
全員が動く。
前へ。
押し返す。
最後の力で。
一体。
二体。
三体。
倒す。
そして。
最後の一体。
叩く。
崩れる。
静寂。
音が消える。
誰も動かない。
数秒。
そのあと。
「……終わったか?」
蓮斗が言う。
白峰が確認する。
「……反応なし」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……おわり」
ぴーちゃんが、弱く光る。
「……やった」
誰かが呟く。
その一言で。
全員の力が抜ける。
座り込む。
倒れ込む。
でも。
笑っている。
守った。
この場所を。
人を。
全部。
守り切った。
それが。
何よりも大きかった。
限界を越えた先に、守れるものがあった。
そして。
それを、掴み取った。
それが。
この戦いの結果だった。




