第56話 「増えすぎた守るもの」
重い。
足が。
でも。
それだけじゃない。
後ろ。
人。
増えている。
「……ゆっくりでいい!」
蓮斗が声を張る。
振り返る。
十人以上。
子供もいる。
大人も。
歩くのがやっとの人もいる。
当然だ。
急に世界が変わった。
普通に動ける方が、おかしい。
「……距離は」
「残り半分」
白峰が答える。
「……遅いな」
「当然だ」
祖父が言う。
「守る対象が増えた」
玲奈が、低く言う。
「……おそい」
ぴーちゃんが震える。
「……いや」
分かっている。
このままじゃ。
危ない。
速度が落ちている。
つまり。
追いつかれる。
その時。
音。
後ろ。
「……来てる!」
誰かが叫ぶ。
振り返る。
影。
数。
多い。
「……くそ」
蓮斗が構える。
「迎撃する!」
「……全員止まれ!」
叫ぶ。
人たちが止まる。
震えている。
でも。
逃げ場はない。
「……前に出るな!」
玲奈が言う。
ぴーちゃんが光る。
「……まもる!」
動く。
影が来る。
速い。
でも。
今までと同じじゃない。
守るものがある。
だから。
動きが制限される。
「……っ!」
蓮斗が弾く。
玲奈が斬る。
白峰が指示する。
繋ぐ。
でも。
余裕がない。
完全に。
「……数が多い!」
押される。
少しずつ。
確実に。
距離が縮まる。
後ろには。
守る人たち。
下がれない。
「……どうする」
白峰が言う。
分かっている。
ここで。
選択だ。
人数を減らすか。
負担を減らすか。
それとも。
全部抱えるか。
「……分けるか?」
蓮斗が言う。
「運べるやつだけ先に――」
「やらない」
即答。
「……おい」
「誰も置いていかない」
静寂。
でも。
迷いはない。
「……無理だぞ」
「無理でもやる」
その一言。
玲奈が、前に出る。
「……まもる」
ぴーちゃんが、強く光る。
「……まもる!!」
蓮斗が笑う。
「しょうがねぇな」
「付き合うか」
白峰が言う。
「非効率だ」
「だが」
「最初から承知している」
祖父が言う。
「ならば」
「やりきれ」
全員が動く。
前へ。
一歩も下がらない。
影が来る。
でも。
押し返す。
限界でも。
削られても。
止まらない。
「……行け!」
後ろの人たちに叫ぶ。
「そのまま進め!」
守る。
全部。
そのために。
ここにいる。
誰も。
見捨てない。
それが。
俺たちの選択だ。
だから。
絶対に。
折れない。
守るものが増えたなら、強くなるしかない。
それが。
俺たちの答えだった。




