第48話 「それでも進む」
走る。
もう何個目か。
数えていない。
数える余裕もない。
「……次だ!」
蓮斗の声。
ダンジョンに入る。
影。
二体。
処理する。
動きは、速い。
でも。
身体が覚えている。
迷わない。
斬る。
叩く。
繋ぐ。
一瞬で終わる。
「……次」
息を整える間もなく。
外へ。
また走る。
次。
また次。
繰り返す。
ダンジョン。
一つ。
二つ。
三つ。
増えていく。
でも。
まだ足りない。
身体は重い。
限界に近い。
でも。
動きは、止まらない。
むしろ。
“洗練されていく”。
「……なんか」
蓮斗が言う。
「楽になってねぇか?」
「……ああ」
白峰も頷く。
「動作が最適化されている」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……速い」
ぴーちゃんが、少し元気になる。
「……できる」
その時。
違和感。
「……?」
手を見る。
何かが。
増えている。
感覚。
引き出し。
動きの選択肢。
増えている。
「……白峰」
「今、何個だ」
少しだけ間。
「……十」
「……は?」
蓮斗が止まる。
「いつの間にだよ」
白峰が言う。
「戦闘中に増加している」
「条件は不明」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……増えてた」
ぴーちゃんが、嬉しそうに揺れる。
「……いっぱい」
祖父が言う。
「当然だ」
「……は?」
「使っているからだ」
その一言。
理解する。
スキル。
増えたんじゃない。
“引き出された”。
戦いの中で。
必要だったから。
使ったから。
だから。
増えた。
「……なるほどな」
蓮斗が笑う。
「いいじゃねぇか」
「効率いい」
白峰が言う。
「合理的だ」
玲奈が、静かに頷く。
「……いい」
ぴーちゃんが、強く光る。
「……つよい!」
でも。
安心はできない。
スキルが増えても。
時間は増えない。
疲労も消えない。
むしろ。
削られている。
「……行くぞ」
もう一度、走る。
次のダンジョンへ。
十個。
超えた。
でも。
まだ足りない。
もっと。
取る。
全員を守るために。
その覚悟があるから。
進む。
限界を越えて。
その先まで。
気づかないうちに、強くなっている。
でも。
それでも足りない。
だから。
進むしかない。
それが。
今の戦いだった。




