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第45話 「誰も捨てない」

 戻る。


 三つ目のダンジョンから。


 静かだった。


 でも。


 空気は、重い。


「……十五人か」


 蓮斗が言う。


「全然足りねぇな」


 白峰が頷く。


「家族を含めれば」


「最低でも三十は必要だ」


 玲奈が、ぽつりと言う。


「……足りない」


 ぴーちゃんが震える。


「……いや」


 祖父が言う。


「で」


「どうする」


 その一言。


 全員が止まる。


 分かっている。


 選ぶしかない。


 誰を入れるか。


 誰を捨てるか。


「……無理だろ」


 蓮斗が言う。


「全員は無理だ」


「……ああ」


 白峰も、静かに言う。


「現実的ではない」


 玲奈が、低く言う。


「……選ぶ」


 ぴーちゃんが、強く震える。


「……いや」


 その声。


 はっきりと拒絶。


 俺は、目を閉じる。


 浮かぶ。


 家族。


 仲間。


 近所の人。


 顔。


 全部。


「……やらない」


 目を開ける。


「……は?」


 蓮斗が振り返る。


「選ばない」


「……おい」


「全員入れる」


 静寂。


「……無理だろ」


「無理じゃない」


「……どうやってだよ」


「……増やす」


「……は?」


「ダンジョンを取る」


「できるだけ多く」


 白峰が、少しだけ目を細める。


「数で解決するか」


「……ああ」


 蓮斗が笑う。


「バカだな」


「でも」


「それしかねぇな」


 玲奈が、静かに頷く。


「……いく」


 ぴーちゃんが、強く光る。


「……いい!」


 祖父が言う。


「覚悟は決まったな」


「……ああ」


 その時。


 空気が、少しだけ変わる。


「……なあ」


 蓮斗が言う。


「いつ来ると思う?」


「……何がだ」


「世界の変化だよ」


 静寂。


 誰も答えられない。


 白峰が言う。


「分からない」


「だが」


「確実に来る」


 祖父が言う。


「近いな」


 玲奈が、低く言う。


「……はやい」


 ぴーちゃんが震える。


「……くる」


 その言葉。


 根拠はない。


 でも。


 全員、同じ感覚だった。


 “時間がない”。


 でも。


 いつかは分からない。


 それが。


 一番、怖い。


「……急ぐぞ」


 自然に出た。


 全員が頷く。


 走る。


 次のダンジョンへ。


 一つでも多く。


 少しでも早く。


 間に合うか分からない。


 でも。


 やるしかない。


 止まったら終わる。


 だから。


 進む。


 全員を守るために。


 その覚悟があるから。


 足は止まらない。


 期限は分からない。


 だから。


 止まれない。


 それが。


 今の現実だった。



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