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第453話「遠い町の朝」
朝日が昇るころ。
群馬から少し離れた小さな町でも、一日は静かに始まっていた。
老人は店先の掃き掃除を終え、ゆっくりと暖簾を掛ける。
隣ではパン屋が窯に火を入れ、通学路では子どもたちが笑いながら坂道を駆け下りていく。
世界は変わった。
それは誰もが知っている。
それでも、人は朝になれば扉を開ける。
その当たり前を繰り返していた。
「今日は野菜が多いねぇ。」
八百屋の主人が荷車を見ながら笑う。
「今年は畑が元気だからな。」
農家の男も笑って返した。
どこにも英雄はいない。
誰も神城悠真の名前を口にしない。
それでも、この静かな町の朝は、誰かが守り抜いた昨日の上に続いていた。
町外れでは、補修を終えた橋を子どもたちが元気よく渡っていく。
橋脚には新しい木材が使われ、まだ樹の香りが残っていた。
老人はその橋を見つめ、小さく頷く。
「丈夫に出来とる。」
その一言だけだった。
誰が直したかも。
誰が守ったかも。
もう語る者はいない。
それでよかった。
世界は誰か一人のものではない。
こうして今日も、人々の暮らしの中で静かに続いていく。
朝の陽射しが町を優しく照らし、人々はそれぞれの一日へ歩き出していった。
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