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第451話「窓辺の約束」
夕暮れが少しずつ町を包み始める頃。
玲奈は二階の窓を静かに開けた。
風が部屋へ流れ込み、薄いカーテンがゆっくりと揺れる。
遠くからは畑仕事を終えた人々の話し声が聞こえてきた。
荷車を押す音。
犬の鳴き声。
夕飯の支度をする包丁の音。
それら一つひとつが、胸の奥へ静かに染み込んでくる。
「玲奈。」
後ろから悠真が声を掛けた。
「今日は少し休めたか?」
「うん。」
玲奈は振り返り、小さく笑った。
「あの頃はね、耳を澄ませるたびに、世界中の悲鳴が聞こえてくるような気がしてた。」
悠真は黙って隣へ立つ。
「でも今は違うの。」
玲奈は庭で遊ぶ子どもたちを見つめた。
「笑い声が聞こえる。」
その言葉に悠真も庭へ目を向ける。
鬼ごっこをする子どもたち。
洗濯物を取り込む美月。
薪を運ぶ蓮斗。
誰も特別なことはしていない。
それでも、その一つひとつが世界を支えている。
「悠真。」
「ん?」
「この景色を忘れないで。」
玲奈は静かに言った。
「戦ったことより、この景色を守ろうとしたことを。」
悠真はゆっくり頷いた。
夕日が町を優しく染めていく。
その光は誰かだけを照らすことなく、今日を生きたすべての人へ静かに降り注いでいた。
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