第450話「守るということ」
夕暮れ前。
蓮斗は見張り台の上から、群馬の町並みを静かに眺めていた。
赤く染まり始めた屋根。
煙突から立ち上る白い煙。
帰り道を急ぐ人々。
それらは戦いの景色ではなく、生きている景色だった。
階段を上る足音が聞こえる。
「ここにいたか。」
悠真だった。
「見回りは?」
「終わった。」
二人は並んで町を見渡した。
しばらく言葉はない。
風だけが二人の間を通り抜けていく。
「静かになったな。」
蓮斗がぽつりと呟いた。
「でも、この静けさは誰かが守り続けないと、すぐ消える。」
悠真は小さく頷いた。
「だから俺たちは残る。」
王になるためでもない。
英雄になるためでもない。
この町で生きる人たちが、明日も変わらず朝を迎えられるように。
そのためだけに。
「昔はさ。」
蓮斗が苦笑する。
「もっと派手な終わり方を想像してた。」
「俺もだ。」
「でも悪くない。」
そう言って町を見下ろす。
夕食の支度を知らせる鐘が鳴った。
遠くで子どもたちが笑いながら家へ走っていく。
その光景を見つめながら、蓮斗は静かに息を吐いた。
「守るってのは、案外こういうことだったんだな。」
悠真は何も言わなかった。
ただ同じ景色を見つめ、ゆっくりと見張り台を降りていく。
夕焼けに包まれた町は、今日も穏やかな一日を終えようとしていた。
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