第442話「断面の完全静止」
夕方。
観測班の部屋。
白峰蓮は、地上の混乱を無視して、画面の数字だけに視線を固定していた。
悠真が三つ目の無線機を壁に接触させたのと同時刻。
完全に硬化していた世界断面の直線は、さらに特異な変化を見せていた。
数値そのものが、観測装置の測定限界を下回る「絶対零度」のような完全な静止状態に入ったのだ。
「連動性が、逆に牙を剥き始めましたね」
蓮はペンの先で画面を叩いた。
東京、九州、北海道、そして海外のすべての管区。
群馬の深部が三つ目の意思を受け入れたことで、世界中の隔離装置が同時に、その内側のシステムを完全にロックしたのだ。
これにより、強敵を連続消費して世界を加速させようとする東京の計画は、物理的に不可能となった。
「東京の本部でも、今頃警報が鳴り響いているはずだ」
蓮は冷淡に笑った。
「どれだけ兵力を動かそうとも、装置が動かなければ、彼らの言う『救済』のプログラムは発動しない。彼らは、自らが持ち込んだ武力の無意味さを知ることになる」
世界は勝手に動いている。
しかし、その動きの鍵は、すでに群馬の地下に沈んだ三台の機械によって握られていた。
蓮はノートに「三段階目の接続・全体の完全ロック」とだけ書き記した。
感情を挟まない冷酷な数字が、紙の上にただ固定されていく。




