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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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433/451

第433話「台湾の選択」

早朝。

台湾管区、霧深き山岳地帯の陣地。


ユナは、湿った泥の上に腰掛け、古い自動小銃のボルトを引いていた。


カチャン、と硬い金属音が周囲の静寂に響く。

東京の軍勢が群馬への侵攻を開始したという報せは、彼女の陣地にも冷たい緊張をもたらしていた。

世界が勝手に動く。

その歪みが、進行順の遅いこの南国の地を、じわじわと圧迫し始めている。


「ユナ、私たちはどうするの?」

偵察員が、遠くの隔離装置の基部を見つめながら聞いた。


「動かないわ」

ユナは銃を膝の上に置いた。

「東京の本部が勝てば、世界は加速して、ここの侵食段階が一気に進む。神城悠真が持ちこたえれば、この静けさは続く。私たちの選択肢は、最初から一つしかない」


彼女の勢力は、物語の中盤以降を担う。

ここで世界を破壊させるわけにはいかないのだ。

英雄化も支配も拒否した群馬の青年の「維持」の思想を、彼女もまた、自らの場所を守ることで支持しようとしていた。


「防衛線の出力を最大に保って」

ユナが霧の向こうに視線を向けた。

「大人の戦争に、私たちの未来を巻き込ませない。ただ、自分の日常を維持するのよ」


朝の光が霧を赤く染め、巨大な装置の輪郭をうっすらと浮き上がらせていった。

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