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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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432/451

第432話「北海道の夜前鐘」

深夜。

北海道、蒼月残存区域の外壁。


しばらくの間、一度も鳴らなかった夜前鐘の音が、不意に一回だけ、低く重く響き渡った。


それは侵食の再開を告げる音ではなかった。

世界断面が完全に硬化したことによる、システム全体の「軋み」の音だった。

人々は驚いて空を見上げたが、白影は動かないまま、夜の雪原を静かに照らし続けていた。


蒼月レインは、司令室の窓からその光景を見つめていた。

手元の計器の直線は、微動だにせず数値を固定している。


「東京の部隊が、群馬の県境を越えたようです」

補佐官が、衛星通信の記録を持って走ってきた。


蒼月は頷き、ノートを閉じた。

「始まりましたね。世界を救おうとする者たちの、不穏な行進が」


北海道編のルールは、ただ生活維持を積み上げること。

急激な解決を望まず、徐々に進行する過程を重視する。

その思想が、この最果ての地にある人々の生存を支えていた。


「私たちは、列車の運行を継続します」

蒼月は静かに指示を出した。

「地上がどれだけ騒がしくなろうとも、この北の観測線を切らしてはならない。神城悠真が持ちこたえる時間を、一秒でも長く稼ぐために」


鐘の残響が、凍てつく夜の空気の中に、静かに、しかし重く溶けていった。

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