第430話「東京の軍靴」
夜。
関越自動車道、群馬県境付近。
数十台の大型軍用トラックが、ライトを消したまま、暗闇の高速道路を北へと進んでいた。
東京、神城勢力本部の直轄部隊。
彼らの装備は、地方の自衛隊とは比較にならないほど近代的であり、その目的は「群馬管区の強制管理」だった。
世界断面の数値が完全に硬化した今、彼らは一刻も早く神城悠真の身柄を拘束し、システムの主導権を握ろうとしていた。
「群馬の白影に動きはありません」
先頭の指揮車内で、オペレーターが報告する。
「黒崎の老人が、何か仕掛けてくる可能性は?」
隊長が冷たい目を前方に向けながら尋ねた。
「観測データ上は、拠点の兵力に移動の兆候はありません。彼らは、自衛隊の撤退を受けて完全に孤立しています」
「フン、所詮は田舎の避難民の集まりだ」
隊長は無線機を手に取った。
「世界を救うという大義の前に、老人の頑迷な思想など無価値だ。抵抗する者はすべて排除し、神城悠真を確保しろ。自らの勢力の勝利を確実にするのだ」
彼らは、強敵を連続消費し、世界を征服する側の思想に完全に染まっていた。
主人公が万能化を拒否し、王になることを避けているのに対し、彼らの欲望は世界の破滅を早めていることに気づいていない。
軍靴の音が、静止した群馬の夜を確実に踏みつぶそうとしていた。




