第43話 「現実の制限」
静かだった。
さっきまでの異常な空間が、嘘みたいに。
目の前には。
いつものダンジョン入口。
「……戻ったな」
蓮斗が呟く。
「……ああ」
白峰が周囲を確認する。
「構造は通常」
「敵の気配もない」
玲奈が、ゆっくりと息を吐く。
「……普通」
ぴーちゃんも、小さく揺れる。
「……だいじょうぶ」
祖父が言う。
「だが」
「終わってない」
その一言で。
全員の意識が戻る。
そうだ。
問題は、これからだ。
「……なあ」
蓮斗が言う。
「さっきのやつ、なんだったんだ」
「分からない」
正直に答える。
「でも」
「今は関係ない」
「……は?」
「優先順位がある」
白峰が、すぐに理解する。
「……家族か」
「……ああ」
その言葉。
空気が変わる。
現実に戻る。
「……どれくらい入れるんだ?」
蓮斗が言う。
その問い。
全員が、ダンジョンの奥を見る。
そして。
思い出す。
違和感。
今まで、考えていなかったこと。
「……白峰」
「分かるか?」
少しだけ間。
「……五人だ」
「……は?」
「収容可能人数」
「最大五人」
静寂。
「……嘘だろ」
蓮斗が言う。
「少なすぎるだろ」
「……ああ」
でも。
事実だった。
玲奈が、ぽつりと言う。
「……入れない」
ぴーちゃんが、震える。
「……いや」
その言葉。
重い。
五人。
俺たちで、すでに五人。
祖父。
玲奈。
白峰。
蓮斗。
そして。
俺。
「……は?」
蓮斗が笑う。
「じゃあもう満員じゃねぇか」
誰も、否定できない。
「……家族は?」
玲奈が言う。
答えは。
ない。
入れない。
守れない。
それが。
現実。
「……他にダンジョンは?」
白峰が言う。
「ある」
「……玲奈」
「……うん」
「……一つ」
「私の」
玲奈が制圧していたダンジョン。
「……それで十人か」
蓮斗が言う。
「全然足りねぇな」
祖父が言う。
「だからどうする」
選択。
まただ。
でも。
今度は。
もっと重い。
誰を入れるか。
誰を入れないか。
それを。
決める。
「……取りに行く」
自然に出た。
「……は?」
「もう一つ」
「ダンジョンを取る」
白峰が言う。
「合理的だ」
蓮斗が笑う。
「いいじゃねぇか」
玲奈が、静かに頷く。
「……いく」
祖父が言う。
「それしかない」
ぴーちゃんが、小さく光る。
「……いっしょ」
決まった。
五人じゃ足りない。
なら。
増やす。
守るために。
選ぶために。
この世界で。
生きるために。
俺は、前を見る。
次に行く場所。
新しいダンジョン。
そこを。
取る。
それが。
次の目標だ。
現実は、甘くない。
でも。
変えられる。
そのために。
動く。
ここからが。
本当の戦いだった。




