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第427話「地上の自給」
夕方。
拠点の調理場裏。
美月は、畑から収穫されたばかりの小さなジャガイモを、籠に仕分けしていた。
東京からの最終通告の報せは、すでに配給班の彼女の耳にも届いていた。
物資の供給が止まる。
それは、この避難区画にとって致命傷になりかねない脅威だった。
だが、美月の手元に迷いはなかった。
「美月さん、倉庫の缶詰の在庫、これで全部です」
若い隊員が、埃をかぶった木箱を運んできた。
「ありがとう。これで、しばらくの間は予定通り配給が続けられるわ」
美月は鉛筆でノートに印をつけた。
「東京が物資を止めるなら、私たちは私たちの作れるもので食い繋ぐだけ。今までも、そうやって生きてきたんだから」
「低確率でも、もし本部の部隊が攻めてきたら……」
「それは、悠真たちや恒一翁が考えてくれるわ」
美月はジャガイモの土を、指先で丁寧に払い落とした。
「私たちの仕事は、明日もみんながご飯を食べて、壁の補修ができるようにすること。それを忘れたら、戦う前にこの拠点が崩れてしまう」
大きな演説も、世界を救う大義もない。
明日も生活を維持するという乾いた自覚だけが、美月の沈黙の中に息づいていた。
遠くで、見張り班の交代を告げる鐘の音が、夕暮れの区域に静かに響き渡った。




