第426話「絶望の底流」
昼。
青い光の中。
悠真の意識は、再び人類の古い記憶の底へと沈み込んでいた。
流れ込んでくるのは、近い過去の出来事ではない。
数百年前に、この隔離装置が作られた当時の人々の、狂気的なまでの「生への執着」だった。
世界病という現象を防ぐために、自らの都市を、記憶を、および大切な人々の存在を切り離してカプセルに閉じ込めた創始者たちの記録。
「これが、世界の始まりか」
悠真は目を凝らした。
光の中に、いくつかの巨大な影が立っているのが見えた。
魔王と呼ばれる管理者たち。
彼らは世界を支配するためにそこにいるのではない。
この切り離された絶望の質量が、再び地上へと溢れ出さないように、その身を肉体の檻として閉じ込め続けている囚人なのだ。
グラディオスが魔王を屠ろうとするのは、その檻を壊し、システムそのものを己の肉体で統治するため。
東京の人間たちが強敵を連続消費しようとするのは、その檻の鍵を奪うため。
誰もが、この冷酷な仕組みの真実を知らないまま、自らの欲望のままに動いている。
「悠真、息をして」
玲奈の声が、暗闇を切り裂いて届いた。
悠真は現実の感覚を取り戻し、大きく息を吸い込んだ。
手のひらの下の壁は、激しい脈動を繰り返しながらも、かろうじてその輪郭を保っていた。
急激な変化はない。
ただ、世界の悲しい真実だけが、悠真の体の中に重く、静かに沈殿していった。




