第424話「三度目の降下路」
昼。
地下トンネル、第二中継所。
四人は、暗闇の奥へと続く錆びたレールの上を歩いていた。
懐中電灯の光が、湿ったコンクリートの床を白く浮き上がらせる。
しばらくぶりの地下は、地上の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
だが、白峰蓮が持つ計器の針は、微小な「小波」の振動を今も規則正しく刻み続けていた。
「東京が動いたな」
蓮斗が先頭で、足元の瓦礫を退けながら言った。
「ああ」
悠真は後ろに続きながら、ポケットの二台の無線機を確かめた。
「地上がどうなろうと、俺たちのやるべきことは変わらない。地下の壁を、もっと深く馴染ませるだけだ」
「分かってる」
蓮斗はそれ以上言わなかった。
彼らは世界を救う英雄ではない。
ただ、明日も人が生きるための枠組みを維持するだけだ。
事態の急速な決着を避け、過程を重視する移動が暗闇の中で続いていく。
白峰蓮は、歩きながらノートに文字を書き連ねていた。
「温度、振動のリズム、すべてが前回の接触後の値を維持している。深部は、人間の意思を受け入れた状態で安定している」
「でも、すこし苦しそう」
玲奈が目を閉じたまま、静かに言った。
「東京の人が怒ってるのが、あの壁にも伝わってるみたい。世界はぜんぶ、繋がっているから」
四人の足音が、さらに深い暗闇の奥へと吸い込まれていった。




