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第419話「北海道の静止列車」
早朝。
北海道、蒼月残存区域の地下。
観測列車は、古い中継駅のホームに停車したままだった。
エンジンの低いアイドリング音だけが、無人の構内に響いている。
蒼月レインは、車窓から隔離装置の表面を流れる青い光の帯を眺めていた。
七月四日。
予定されていた夜前鐘の音は、今日も鳴らなかった。
「進行順の歪みが、一時的に解消されている」
蒼月は手元のノートに書き留めた。
「群馬での接触による小波が、この最果ての地にも安定をもたらしている。だが、これは氷の上の城だ」
東京が動き出したという報せは、すでに彼女の元にも届いていた。
彼らが介入すれば、この奇跡的な静止は一瞬で崩壊するだろう。
「私たちはどう動きますか」
運転士がコーヒーの入ったマグカップを差し出しながら聞いた。
「動きません」
蒼月はそれを受け取り、短く答えた。
「私たちは観測者であり、この区域の維持者です。神城悠真がその背中で世界を支えているのなら、私たちはその足元が崩れないように、ここで列車を走らせ続けるだけです」
窓の外の青い光は、どこか悲しげで、しかし力強く明滅していた。
急激な解決を望まず、ただ過程を重視する。
その北の意志が、列車の鉄輪の重みとなって地下のレールに深く刻まれていた。




