第415話「玲奈の共鳴」
夜。
神城家の古い自室。
玲奈はベッドの上で、膝を抱えてじっとしていた。
部屋の明かりは消してある。
窓の外から差し込む白影の青い光が、彼女の細い指先を染めていた。
地下での接触以降、彼女の耳の奥には、常に微かな振動音が残るようになっていた。
「れな、ねむれない?」
ぴーちゃんが、枕元から小さな顔をのぞかせた。
「ううん、大丈夫」
玲奈は静かに目を閉じた。
「深部が、何かを思い出そうとしてるみたい」
「おもいだす?」
「ええ」
玲奈は自分の胸に手を当てた。
「私たちが忘れてしまった、遠い昔の人の名前とか。そういうものを、あの装置はずっと預かってくれていたんだと思う」
それは恐怖の感情ではなく、気の遠くなるような時間の堆積だった。
世界病という現象の正体を知った今、玲奈はもう白影を恐れてはいなかった。
それは世界を壊すための怪物ではなく、壊れないように耐えている装置の悲鳴なのだ。
「悠真に、伝える?」
ぴーちゃんが聞いた。
「ううん、悠真はもう知ってるわ」
玲奈は目を開け、窓の外の影を見た。
「だからあの人は、王にもならずに、ただここにいるのよ」
静かな圧迫感が、夜の部屋を包み込んでいた。
物語は急がず、段階的に進行していく。
その冷たい膜の中で、玲奈は再び静かに息を吸い込んだ。




