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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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410/451

第410話「七月一日の終わりに」

夜。

拠点の外壁。


七月最初の夜が、静かに更けようとしていた。


見張り班の交代の足音が、コンクリートの床に規則正しく響く。

「異常なし」

「ああ、異常なしだ」

昨日と全く同じ会話が、今日もこの区域の生存を証明していた。


白峰蓮のノートには、新しい頁に今日の分の事実が書き込まれていた。

【七月一日・深部反応に微小な連動振動(小波)を確認。全体の安定性は継続】


世界は救われなかった。

魔王も消えず、侵食もそのままだ。

だが、神城悠真が二度目の接触で持ち帰った意思の種は、地下の壁の中で静かに息をしていた。


悠真は自室の窓から、遠くの白影を見つめていた。

東京の焦燥も、グラディオスの大剣も、いずれこの拠点に迫ってくるだろう。

だが、彼のやるべきことは変わらない。


王にはならない。

征服も、支配もしない。

ただ、明日もこの日常を維持するために、静かに目を開け続けるだけだ。


美月の計算した未来があり、蓮斗の照らす足元がある。

その地味な生活維持の記録が、夜の静寂の中に、また一頁、確かに積み上げられた。

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