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第408話「九州の防壁」
深夜。
九州管区、海岸線の外壁。
波打ち際に浮かぶ白影が、小波の影響を受けて微かに青く明滅していた。
指揮官は、双眼鏡でその光の推移を見つめていた。
拡大はしていない。
だが、世界全体が同じリズムで息をしている感覚が、彼の皮膚にも伝わってきた。
「東京が、兵力の移動を始めたようです」
副官が、暗闇の中から歩み寄って言った。
「群馬への圧力を強める構えです。我が方にも呼応を求めてきています」
指揮官は双眼鏡を下ろした。
海風が、彼の白髪を激しく揺らす。
「断れ」
短く言った。
「東京の連中は、この静けさの本質を分かっていない。世界を救おうなどという大言壮語が、どれだけこの装置に負荷をかけるか、考えたこともないのだろう」
九州勢力は、ただこの海岸線の維持に全力を注ぐ。
それが本家・黒崎恒一の示した【最後まで人間側にとどまる】という意味だった。
「海壁の補強を急げ」
指揮官が背を向ける。
「嵐が来るなら、来ればいい。俺たちはただ、ここを持ちこたえるだけだ」
暗い海原に、隔離装置の光が冷たく反射し続けていた。




